ティーザー | The Tech Between Us
EIT 2024 | Topic 3 | HMI | Podcast Part 1
ポッドキャスト:
The Tech Between Us
パート1:
ヒューマン
ファクターと
HMIの未来
レイモンド・イン:
このポッドキャストをお聴きくださっている方なら、私がスタートレックとその懐かしのオリジナル・シリーズの大ファンであることをご存知でしょう。子供の頃も、そして今も、宇宙船U.S.S.エンタープライズの象徴的な司令塔を思い浮かべることがあります。何かが起こっているのを示す点滅ランプのパネルが並んでいましたが、乗組員に意味のある情報を知らせるというよりは、チカチカさせて、てんかん発作を誘発するようなものだった気がします。カーク船長が「ファクター3へ進め!」と命令すれば、乗組員がコントロール・パネルの大して区別もないノブやボタンを何十個も押していました。人間と機械のシームレスな相互作用に魅了されましたが、ボタン類にはラベルも貼っていなく、宇宙艦隊で働くには、色や形、ボタンやノブの押す順番を完璧に覚えられる記憶力が必要なのだと思ったものです。
これが1960年代の低予算SFであることは百も承知ですが、この前提が本日のテーマである 「ヒューマンマシンインターフェイスの奇妙な新世界への果敢な探求」につながっています。ポケットの中のスマートフォンから車、カウンター上のコーヒーメーカーに至るまで、私たちは常にデバイスに接しています。しかし、すべてのインタラクションが同じように作られているわけではありません。私たちの生活に支障なく溶け込んでいる機器もあれば、フラストレーションをたまらせる機器もあります。
なぜそのようなことが起こるのか、そしてさらに重要なこととして、私たちがどう機器と接するかをメーカーがどのようにして決定しているのかを探るにあたり、本日はエマーゴUL(Emergo by UL)のシニア・リサーチ・ディレクターであり、書籍「医療機器のユーザービリティテスト(原題:Useability Testing of Medical Devices)」の共著者であるアリソン・ストロクリック氏をお招きいたしました。アリソンさん、The Tech Between Us!へようこそおいでくださいました。
それではご自身とEmergoでのお仕事について簡単にご紹介くださいますか。
アリソン・ストロクリック:
こんにちは。レイモンドさん、私を招待してくださり、ありがとうございます。今日ご一緒できることをとても楽しみにしていました。アリソン・ストロクリックと申します。ヒューマンファクターエンジニアリングの分野で、特に医療、製薬、ヘルスケアの領域に20年ほど従事してきました。Emergo by ULでは、ヒューマンファクター研究・設計チームのシニア・リサーチディレクターを務めています。世界各国の45人のコンサルティングチームで、医療、医薬、ヘルスケア製品を使いやすく安全にするという目標に向け全員が力を注いでいます。ヒューマンファクター専攻の学士と修士を取得していますが、このポッドキャストからその学問に興味を持ちはじめる方も、そしてそれが学問だと初めて気づいた方もいらっしゃるかと思います。本日ももちろんHMIについてお話ししていきたいと思っています。
私が所属するEmergo by ULは、UL Solutionsの一部で、以前はUnderwriters Laboratoriesとして知られていました。UL Solutionsは、試験、検査、認証サービス、ソフトウェア製品、アドバイザリーサポートを提供しており、そのグループに私も所属しています。ULブランドやUL認証マークは、エンジニアや一般のみなさんにも広く知られているかと思います。電球やコンピュータの充電器の底を見ると、丸の中に小さなULが表示されていることがよくありますが、それが所属する広範なグループです。
レイモンド・イン:
最初にお話をうかがったとき、ULという文字から、あの Underwriters Laboratoriesなのか、とても気になりました。認証プロセス、試験プロセス、安全プロセスを通じて、エンジニアなら誰でも、ULを知っています。ULについては地球上のエンジニアであれば、みな詳しいでしょうし、あなた方が一つの大企業として、あらゆる種類の機器を使ってより大きな目標に取り組んでいることは素晴らしいことです。
アリソン・ストロクリック:
ええ、100%ULです。ですので安全性だけでなく、幅広い領域でのセキュリティや持続可能性にも焦点を当て続けています。サービスは確実に拡大しており、創業130年になります。
レイモンド・イン:
まさに。申し上げたとおり長い歴史ですね。
アリソン・ストロクリック:
私たちのチームについて、もう一言二言付け加えさせていただきたいのは、ヒューマンファクターつまり、HMI部分に焦点をあてていることです。製品開発の取り組み全体を通じて医療機器メーカーや製薬メーカーの方々と協力し、製品が安全かつ効果的に使用できるよう支援しています。 お客様の市場での成功の支援とともに、ヒューマンファクターを適用し開発全般で多くの法規制をお客様が確実に遵守できるようにご協力したいと考えています。
レイモンド・イン:
このセグメントのテーマは技術的にはHMIですが、ヒューマンファクターはさらに多くの要素を含んでいるように思われます。ヒューマンファクターとは何を意味するのか、定義していただけますか。
"アリソン・ストロクリック:
もちろんです。ヒューマンファクターとは学際的な分野で、心理学、工学、デザインの三つのベン図が交わるところにあります。私の学士号は工学心理学ですが、それはもともとの用語で、現在は別名ヒューマンファクターとなっています。しかし、最も大きなカテゴリーでは、人と製品、人とシステム、人とサービスの間に素晴らしい適正性があることを保証する手助けをする機能です。つまり、製品、システム、サービスをユーザー中心に意図的に設計するということです。工学的な観点、生体適合性の観点、電気安全性の観点から製品を設計するのとは対照的です。そういったものは「ちゃんと使用できればいいのだけど」と後に人々の手に渡されるだけなのです。ですから、ユーザ中心設計はエンドユーザーの具体的な知識に基づいて製品を設計するということです。彼らの能力、制限なども含まれる可能性もありますし、障害のあるユーザーがいる場合、ユーザーの過去の経験が、製品の設計に影響を与えますし、またどう設計するかに影響されるべきだと思っています。
ユーザー中心設計という言葉も、ヒューマンファクターの業界ではよく使われます。もしよろしければ、具体的な例を挙げさせていただきます。
レイモンド・イン:
もちろんです、お願いします。
アリソン・ストロクリック:
ヒューマンファクターの考慮事項ですが、例えば、人々が現在の製品をどのように使っているかを研究し、インタビューし、フィードバックを集め、人々のニーズや好みを理解し、製品と人々の間に物理的適正性があるかを確認します。人間工学や人体計測学といった用語において考えた場合、それは「私が握らなければならないハンドルは、私の手のサイズで握れるか?」「この椅子に座れるか?」「このデスクで立っていられるか?」ということです。それから、物理的な要素だけでなく、記憶の制約や認知能力という観点から、相互作用の認知的要素についても考えます。そして最後に私が投げかけるのは、メンタルモデルという言葉です。これは基本的に、ユーザーとして作り上げたモデルのことで、それを期待値やベースラインとして考え、世にリリースしたその製品とは異なるメンタルモデルを人々が持っている場合、何が起こり得るかと言うことも考えます。
レイモンド・イン:
私は元デザインエンジニアですから、「当然このように使うに違いない」とお考えになるでしょう。そして、おそらくあなた方の世界では、「当然」ということはなく、常に「そうかこうやって使うのか」となるのでしょうね。
アリソン・ストロクリック:
私たちがお客様のために行っている活動のひとつに、ユーザビリティ・テストもしくはユーザーテストと呼ばれるものがあります。その目的は、実際に製品を試用してもらうことです。また、医療分野では、試用シミュレーションをしてもらいます。私たちのチームは臨床試験などは行いませんが、吸入器であれ、ペン型注射器、輸液ポンプ、病院のベッド、透析装置、手術用ロボットと、そのユーザーが誰であれ、お越し願って使用してもらい、フィードバックをいただきます。私にとって非常にやりがいを感じるのは、私たちのラボで開催されるユーザビリティ・テストセッションにお客様方がおとずれてくださる時です。プロダクトマネージャーやデザインエンジニア、その他の部署の方々がいらして、ご自身がデザインした製品が一般の方々によって試用されているを目の当たりにし「ハッ」となさってる瞬間は、開発者の彼らにとっても充実感や満足感があるようで、非常に洞察的でらっしゃるのがわかります。
レイモンド・イン:
まったく同感です。私もポッドキャストでいろいろなゲストとお話をしていて、「ハッ 」とする瞬間が好きですね。
アリソン・ストロクリック:
そうですよね、楽しい部分でもありますよね。
レイモンド・イン:
そうでしょうね。さて、あなたは心理学と工学とデザインのベン図のようなものだとおっしゃいました。その中で、初期段階において他の分野よりも重要な分野はありますか?私は、心理学がエンジニアリングやデザインよりも大事な傾向があると思うのですが、どうお考えですか?
アリソン・ストロクリック:
すばらしい質問ですね。一つの学問がどの段階でうかび上がるかという観点で考えたことはありませんでした。一つが上がってきて、他の学問が下がるというのは、音の波のような図式を想像してもらえればいいでしょう。もし、この三つの中から選ぶとしたら、間違いなく心理学からでしょう。なぜなら、ヒューマンファクターの原則は製品の設計を考え始めるときに適用し始めるからです。試作が出来上がったり、デザインがほぼ完成まじか、あるいは最終チェックに記入するときの適用ではありません。それでは遅すぎます。早い段階で行うことが本当に必要なのです。つまり、私は何をデザインしているのか、どんな問題を解決しようとしているのか、この製品のユーザーは誰なのか、彼らの課題や期待は何か、などを考える時です。そこで、インタビューやフォーカス・グループ、観察といった形で、初期段階の調査を行います。場合によっては、それらは非常に価値があるものになるのです。家庭環境や、あるいは私たちの場合は臨床や病院環境を訪れ、手術チームがこの製品をどのように使っているのか、またどのような課題があるのか、あるいはNICUの看護師がこの種の保育器をどのように使っているのかなどを確認します。そうして、ユーザーの期待や能力を前もって考え、その上で設計内容や、何をする必要があるのかなど、製品を形作る手助けをしたいと思っています。
レイモンド・イン:
確かに。理解し、設計し、そして構築するという理にかなった進行方法ですね。それは実に自然な流れだと思います。
アリソン・ストロクリック:
流れについて触れますと、流れはありますが、ヒューマンファクターの重要な側面の一つは反復的な設計です。 ですから最初に調査を行って要件の設定から設計、そして検証へと進むというわけではないのです。
私たちは大抵は別のユーザーと反復を行いますが、時には同じユーザーとも行うことがあります。 そして変更や修正がまだ可能な段階で、「ご協力ありがとうございました。私たちはこちらをデザインしましたが、どう思われますか?」というようなことを言います。というのもヒューマンファクターやこの種のユーザビリティ評価活動に参加するのが遅すぎて、デザインが固まってしまい、変更できなくなってしまっているということがあります。そして、その時点で、こういった分析、評価活動を適用することの潜在的なメリットを多く逃してしまっているのです。
レイモンド・イン:
さて、そうすることでプロセスをさらに深く調べてらっしゃるようですが、ひとつお伺いしたいことがあります。反復回数は何回でしょう? 全員がみな自身の仕事をして奇跡がおこれば、反復は一回になりますが、何回くらいの反復を見たことがありますか。あるいは実際細部まで徹底的に掘り下げる必要があるとお思いですか。
アリソン・ストロクリック:
それは本当にさまざまです。もし一回しか反復していないのであれば、良い仕事をしているとは言えないでしょう。設計した製品が素晴らしく、人々がそれを使用し「すばらしいね」と言ってくれるかもしれません。しかし、私たちがこの分野で本当に広めようとしているのは、反復的なアプローチと早い段階でのフィードバックを得ることです。そしてデザインを改良していくのです。最初は二つのデザインを比較していたとしても、ユーザーからのフィードバックをもとにデザインを絞り込んでいきます。そして、コンセプトAをさらに改良し、人々の前に戻します。そして、ヒューマンファクター活動の他の部分でも、同じような反復プロセスが行われます。例えば、私が主に担当している医療や製薬の分野では、「使用関連リスク分析」と呼ばれる活動をしています。開発中の製品を取り上げ、人々が間違った使い方をするのではないか、あるいはさらに懸念されるのは、深刻な危害の可能性があるのかと言うことや、そしてそれをどのように緩和するか、あるいはそのような事態が起こるのを制限、抑制する解決策をどのように設計するかと言うことを行います。したがってこれも設計を開発し、導入した保護手段が効果的かどうかを確認するための反復プロセスでもあります。
しかし、ラウンド数と言う点では、部分的に製品の複雑さにもよります。例えば、製品開発をしているとします。極端な例で、5つのサブシステムを持つロボット支援手術システムの開発です。それぞれが独自のミニ開発作業であり、最終的にはもちろん、それらが統合されます。それに対して、より単純な、単一または複数の使用可能な薬剤投与機器、または組み合わせ製品と呼ばれるもの、例えば注射器や吸入器があります。これらは、相互作用ポイントが少なく、タッチポイントも少ないため、理想的にはエラーの機会が少なく、考慮するバリエーションも少ないと思われます。しかし、最低限、ユーザーからの入力やフィードバックを含む反復を3回は行う必要があると言えるでしょう。ヒューマンファクターにおいて、ほとんどの質問への答えが「状況によります」というジョークのようなことが往々にあるのですが、すでに一度私は言ってますよね。最大で、4、5、もしくは6回に抑えるつもりです。わかりませんけど。でも本当に状況によりますね。これで二回も言ってしまいました。
レイモンド・イン:
そうですか。おかしなことに、マウザーで多くの人にどう思うかと尋ねられた時のわたしのお馴染みの返答は、「ええ、状況によりますね」なわけです。
アリソン・ストロクリック:
いいですね、私たちは良いお仲間ですね。
レイモンド・イン:
ええ、まさにお気持ちがわかりますし、何を尋ねているのかを人々に考えさせる素晴らしい方法だと思います。最近ではユーザーインターフェースデザイン、ユーザー体験デザイン、そしてヒューマンファクターについて多くのことが議論されています。これらはすべて別個のものなのでしょうか。それとも同じものの異なる側面、あるいは同じものの異なる段階にすぎないのでしょうか?
アリソン・ストロクリック:
そうですね、それらはいとこの関係か、場合によっては兄弟みたいなものかもしれませんね。工学心理学という言葉は、今ではあまり耳にしなくなった、古い言い方だと言えます。歴史を辿っていくと、ヒューマンファクターという言葉はそれよりも最近のものです。おそらく1940年代から50年代にかけて、特に航空やコックピットの設計において応用され始めたのだと思います。そしてここ数年で、ユーザー体験という言葉がより一般的に使われるようになりました。ですから、素晴らしい質問ですね。こういった専門用語が入り乱れているように感じることがありますから。果たして、最終的にこうした専門用語は同じ意味で人々に理解されるようになるのでしょうか。私の同僚は、まさにこのトピックについてブログを書いていました。それは「ユーザー体験」対「ヒューマンファクター」対「UIデザイン」対「HCI」というものです。ユーザーインターフェイスデザインの略であるUIデザインは、多くの人はその言葉からソフトウェアや、グラフィックユーザーインターフェイスであるGUIを思い浮かべるでしょう。ですがユーザーインターフェイスはあらゆるユーザータッチポイントのことなのです。
ですから、ソフトウェアやハードウェア、ラベルやパッケージング、また製品に関するトレーニングなども含まれます。技術的には、例えば製品開発に関して言えば、アメリカ食品医薬品局(FDA)は「ユーザーインターフェイス(UI)」という用語を、ユーザーが関与するあらゆるものとして使用しています。ですのでUIデザインはそういったすべてのタッチポイントの設計に特化していますが、必ずしもユーザー中心のアプローチを意味するわけではなく、そこがヒューマンファクターの領域となるわけです。実際にヒューマンファクター、ユーザー中心のアプローチ、UXつまりユーザー体験の人気は高まっています。そして私はUXをもっと広い視点で捉えています。「ユーザー体験とは何か?」「人々が物事をどう認識するのか?」「どのように製品と接しているのか?」「満足度はどうか?」「ワークフローはどうか?」「それらの関わり合いはどうか?」というようなことです。一部の人々はUXを製品の外観や感触に限定して使用していますが、それを超えたものだと私は思っています。ですから、ユーザー体験とヒューマンファクターは同じことを目指していますが、少し異なる視点で捉えています。UIデザインはその物自体の実際のデザインに重点を当てていて、人々とその物との接し方を見ているのではないのです。
レイモンド・イン:
それは興味深いですね。HMIにおいて、ヒューマンマシンインターフェースとUIは似ていると思います。おっしゃったように、それが物理的であれ、ソフトウェアや何であれ実際のインターフェースです。そして、ヒューマンファクターには、私たちがこれまで話してきたような他すべての、意図、なぜ、何が、といったようなこともすべて含まれます。
アリソン・ストロクリック:
私にとってHMIとUIは、やはりインターフェイスだと思います。ヒューマンファクターエンジニアリングやユーザー体験に詳しくなっていくと、少し幅を広めると思います。そして、まだ出てきていない用語で私が兄弟関係にあると思っているのが、「ユーザー中心設計」です。ユーザーを中心に置き、彼らのために、彼らの知識に基づいて設計するという点で、ユーザー中心設計は人間工学に近いと思っています。
レイモンド・イン:
それはとても理にかなっていますね。それに、工学の話をされたのも面白いです。工学心理学という言葉は聞いたことがなかったですが。
アリソン・ストロクリック:
それは古いシステム・エンジニアリングで、より用語的なのです。
レイモンド・イン:
興味深いですね。私にとって、工学と心理学は正反対の分野だと思っていますから。
アリソン・ストロクリック:
そうですね。面白いことに、私はタフツ大学の学士課程で、工学心理学と呼ばれるプログラムに進んだのですが、工学部を通して履修することも、リベラルアーツの学位として心理学部を通して履修することもできたのです。
レイモンド・イン:
本当ですか?
アリソン・ストロクリック:
私は工学部サイドにいたのですが、基本的に、ヒューマンファクター中心の授業は人間工学を通して履修し、心理学サイドにいけば深く心理学を学ぶことになります。私は心理学の授業もとりました。ベン図の中核の一つですね。そして工学や科学入門の授業も工学部の必須科目でしたから履修しました。ですから両側から学べるというのは本当に興味深いことだと思いますし、必ずしも実社会ではそうではないのですが、その教育経路を通じて、一方の学問分野が他方の学問分野よりも重みを持つことになるのでしょう。
レイモンド・イン:
そうですか。申し上げたようにこの二つを一緒にするなんて思ってもみませんでしたが、私はエンジニアで、私の上司は心理学の学位を持っているのです。
アリソン・ストロクリック:
上司の方は、ご存知かもしれませんね。
レイモンド・イン:
そうですね。ここでご一緒する必要がありそうですね。
コマーシャル :ここで一旦、HMIに関するマウザーの記事の一つをご紹介いたします。「ヒューマンマシンインテグレーション: 人間と機械のギャップを埋める 」では、ヒューマンマシンインターフェイスがどのように進化し、より簡単に直感的な方法で、多くのデバイスを使用できるようになったかを掘り下げています。記事全文およびその他の記事は、mouser.com/empowering-innovationをご覧ください。それでは、HMIとヒューマンファクターの未来についての対談に戻りましょう。
レイモンド・イン:
さあここまでで、クライアント製品や製品全般のヒューマンファクターの評価で、あなた方が行っているプロセスのさまざまなテクニックについて、お話しいただきました。日常的に、あるいはプロジェクトごとに行っていることをもう少し詳しく説明していただけますか?
アリソン・ストロクリック:
もちろんです。私たちのチームは製品開発のライフサイクルを通じてサービスを提供しています。ですからクライアントと関わる時期という点では、早ければ早いほどいいのです。 しかし、私たちのお客様やメーカーさんの中には、社内にヒューマンファクター・チームをお持ちのところもあるようです。私たちのようなコンサルタント会社を通じてであれ、社内のリソースであれ、ヒューマンファクターを適用するという点では、早ければ早いほどいいのです。このポッドキャストでハイライトすべきは、ここです。早めに行うことです。製品をデザインしたり、製品のコンセプトを考えたりする場合、多くの場合、お客様はすでにそのコンセプトをお持ちで、初期段階のステップを踏んでから私たちに連絡されます。ですから規制当局の許可を得るまでの間、基本的にヒューマンファクターの観点から次の段階へと計画する手助けをしたいと考えています。
というのも一つ申し上げると、消費者向けの領域では、例えば新しいミキサーやコネクテッド洗濯機などを開発する場合、ヒューマンファクターに関する要件は少ないか、あるいはない、と申し上げてもいいくらいです。一部の消費者向け製品にはもちろん安全性の要件がありますが、医療や製薬、ヘルスケア製品に関しては、厳しい規制や基準があることが前提です。ですから、使いやすく安全な製品を作ることには商業的なメリットがありますが、例えばアメリカのFDAや、ヨーロッパ、中国、日本の国際的な規制当局には、医療機器開発にヒューマンファクターを適用するための基準があります。つまり商業的な部分と規制上の必要性があり、両方の目的を達成するためにお客様がすべき事を私たちはお手伝いしているのです。
レイモンド・イン:
ということは、安全性と安全規制に加えて、実際には一連の規制があり、どのように安全かだけでなく、どのようにユーザーを考慮すべきかという規制があるのですね。
アリソン・ストロクリック:
まさしくその通りです。では、FDAに焦点を当ててお話しします。
レイモンド・イン:
お願いします。
アリソン・ストロクリック:
FDAは2016年に現行の最終ガイダンスを発表しました。少し前のことですが、今でも有効です。このガイダンス文書の最終的な目的は、規制当局に対して、設計した医療、製薬、ヘルスケア、医療機器としてのソフトウェアなどの製品が、意図したユーザーによって、意図した使用環境で、安全かつ効果的に使用できることを示すことです。これは、提出書類におけるヒューマンファクターに関する主張のようなものです。そして、FDAはどう達成すべきかについて説明してきます。その中で重要な側面の一つが、少し前に触れた使用関連リスク分析です。製品のワークフロー全体を分析し、それぞれのステップで何がうまくいかない可能性があるのか、そこから生じる潜在的な危害は何なのかを特定することです。
そして、製品開発と同時にユーザー評価も行われます。FDAは、ユーザビリティ・テストや初期評価の回数については特に気にしていないようです。例えば2サイクルやるのか、4サイクルなのか、それとも10回行うのかといったところです。ただ、彼らは製品開発の最後に、ヒューマンファクター検証テストをするよう求めてきます。それにはかなり具体的なガイドラインがあります。各ユーザーグループを代表する15人を集め、使用テストを実施させ、製品の使用中にどのような使用エラーをし、どのような困難に直面したかを記録し、そしてその調査結果を分析し、リスク分析に反映させ、すべて踏まえて「見せなさい」となるのです。そのようにして製品の使用安全性を証明するのです。FDAはまた、臨床効果や臨床試験結果、生体適合性、電気安全性試験など、その他あらゆることに関心を寄せています。ヒューマンファクターは、市場に参入するために製品安全性の観点から実証される必要のあるパズルの1部ということです。
レイモンド・イン:
実に興味深いですね。実際の製品デザインにおいて、そこまで詳細なレベルにまで至るとは想像もしていませんでした。あなたがおっしゃったように 「機能しますか?安全ですか?」だけではないのですね。
アリソン・ストロクリック:
そうですね。FDAは本当に詳細に調査しています。彼らはお客様が提出した試作や報告書にも目を通し、そして質問してきます。「7人が使用エラーをし、そしてその理由はこうだとあなたは言っています。しかし、私たちはまだ憂慮しています。なぜこれが問題にならないのか教えてください。そうでなければ修正して再テストを行ってください。」というような質問があります。私たち、消費者としては、ここまでやってくれることに感謝ですよね。特に、製品が適切に使用されないと深刻な害が生じる可能性がある製品には高水準の注意が設けられているわけですから。
レイモンド・イン:
過去に何人かの医療機器設計者と共に仕事をしましたから、FDAの認証を取得するためのプロセスがかなり長く、本当に大変なものであるとはうかがってます。しかし、それは時間の長さに影響するのでしょうか? それとも、実際に最終的には改善されるのでしょうか。 それともその両方なのでしょうか?
アリソン・ストロクリック:
素晴らしい質問ですね。 では映画「怪しい伝説」 のように検証しましょうか。
レイモンド・イン:
いいですね、お願いします。
アリソン・ストロクリック:
従来ヒューマン・ファクターに関与しない製品設計プロセスを行ってる人たちは、はじめて学ばれるかと思いますが、「ああ、もうひとつ追加しなければならないのか」と言うようになるでしょう。時間や予算も気にかかるかもしれませんが、最終的にはこの仕事を終わらせなければならないわけです。規制上の義務が常に原動力になるというのは望ましくないわけです。というのはメーカーは競争力があり、使いやすく、満足のいく製品を作りたいはずですよね。私たちは顧客の皆さんにもそうであっていただきたいと思っています。FDAが要求することでもあるので、そうしないといけませんし。とにかく早い段階、つまりコンセプトの段階でユーザーと話し合えば、開発期間を短縮し、コスト削減をすることができます。というのも、開発努力に時間を費やして、規制当局に提出するヒューマンファクター検証テストに近づいてから、「うわ、これは見落としていた」となったら、これは使いこなせない、緊急停止ボタンが見つからない、これはひどい、などとなり、設計を解いて、元に戻さなければなりません。ツールのやり直しです。混乱の元です。ですからこのような作業を早い段階で行うことで、規制当局に提出するまでの時間と費用を節約することができるのです。また、製品が市場に投入される時には、その製品がユーザーに使用されているのをすでに目にしているため、不測の事態や責任問題が発生する可能性が低くなるわけです。
うまくいけば、人々に製品の使い方を教えるトレーニング期間を短縮できます。早めに取り組むことでこういった利点はすべて、製品開発のスケジュールやコスト負担を軽減できるのです。しかし、当初はそのようには考えられていません。
レイモンド・イン:
その通りですね。製品デザインから、心理学的なものからと言うよりも製品デザインやエンジニアリング的なものから行った場合、エンジニアは目を丸くして「ああ、そうか、こうしたり、ああしたりしないといけないのか」と、なるのですね。しかし、おっしゃったように、結局のところその方がいい製品ができるのですね。
アリソン・ストロクリック:
そうやってより良い製品が生み出されます。お話ししましたが、お客様、つまりプロダクト・マネージャーやエンジニアの皆さんが、初めてユーザーにご自身がデザインしたものを使ってもらい、その観察中にみなさんがみせる「ハッ」としている瞬間はたまりません。
月曜日はこの5人が観察し、火曜日は別の5人が観察する、とまでおっしゃるクライアントは第三者を通してではありますが、エンジニアとユーザーをつなげる機会として利用しています。そして共感を得ることは大切です。というのも、この種の分野や製品研究、製品デザインに関しては、共感というのは実に重要なスキルだからです。ユーザーには名前があり、顔があり、家族がいて、目標があり、忙しい生活を送ってらっしゃいます。そして、私の考えとしては、製品を使う人々を観察だけでもその反対側にいるエンジニアは、開発努力を文脈化することができるのだと思います。
レイモンド・イン:
おっしゃるように「ハッ 」とする瞬間ですね。 エンジニアとして、私の共感できる部分は少ないかもしれませんが、共感したり人の反応を見て、ハッとする瞬間を得られるのは、エンジニアにとって、特により多く、そしてより高いレベルのことをしようと考えているエンジニアにとっては、本当に重要なことだと思います。
アリソン・ストロクリック:
また、自身がデザインしたものに四苦八苦しているユーザーをただ目にするのではなく、「わぁ、あの人は私が予想していたのとはまったく違う解釈をしている」とハッとさせられることもあるわけです。簡単な例を挙げましょう。これは何年も前のことですが、思い出しやすい例で、いつも頭に浮かんでくるのです。病院での使用を目的とした透析システムの開発に取り組んでいたときです。タッチスクリーンで治療を再開してもらいたかったのですが、彼らは画面を見て、「キャンセルしたくないのに、なぜ「resume(レジュメ)」と表示されているんだろう?意味がわからない。」となったわけです。
レイモンド・イン:
おお、そうですか。
アリソン・ストロクリック:
「resume(リズーム)続ける」いう言葉のつもりが、ユーザーの方々がたまたまレジュメと読んでしまったので、こちらは「うわー、それは思いもしなかった!」となったわけです。その後ボタンは「continue (続ける)」に置き換えられました。これは些細な例ですが、ユーザーに製品を手にとってもらわなければわからなかったことです。このようなことはよくあることで、大変なことでもあるのですが、「すいません、この商品を今すぐもらえますか?今使っている製品よりもずっと気に入りました」とか、「どうやったら手に入りますかね?」「いつ発売されます?」とおっしゃってもらえると、やりがいを感じます。開発作業でより良いものへと改良し、改善の機会を見つけるのに役立つだけでなく、私たちはみな同じ考え方を持っており、私たちのやっていることは違いを生み出そうとしているという点で大きな自信にもつながるのです。ですから、とても素晴らしいことだと思います。
レイモンド・イン:
なるほど。では、もう少し質問をさせてください。思いついたことをどんどんお答えください。第一問目、ジミーを載せますか、載せませんか。
アリソン・ストロクリック:
ああ、ジミーは載せますが、スプリンクルって呼んでますね。
レイモンド・イン:
これまで手掛けた中で最も興味深いクライアント・アプリケーションはなんでしたか?
アリソン・ストロクリック:
透析は本当に興味深い仕事だと思います。もっともではないかもしれませんが、非常に影響力があり、やりがいがありました。腎臓病で腎不全になると、一日に数時間、たとえば週に4日、クリニックに通って透析を受けなければなりません。そのため、仕事を離れ、家族と離れて過ごす必要があります。ですから、このようなテクノロジーは、過去何年にもわたって着実に家庭に浸透してきています。そして、病状が自身の生活を完全に支配させないようにすることは、ユーザーにとって本当に影響力があることだと思います。
レイモンド・イン:
世界中のさまざまな議会で発表されてらしゃいますが、お気に入りの場所はどこでしたか?
アリソン・ストロクリック:
何度か日本に行く機会があり、その国の多くの側面を本当に楽しみました。東京には少しだけの滞在で、もっと郊外の地域を訪れたのです。そこではほとんどのもののデザインに秩序と思考が行き届いていて、非常に感心しました。物事が整然と行われていて、アメリカではあまり経験しないことです。また、東京に住んでいる日本人の同僚と一緒に旅行できたのが幸運でした。日本語の助けがなければ、そういった遠隔地の場所へはいけませんでしたから。そして、カラオケが仕事の一環として行われていて面白いと思いましたね。"
レイモンド・イン:
もしヒューマンファクターの分野に進んでいなかったら、どんなキャリアを歩んでいたと思われますか?
アリソン・ストロクリック:
何をしているでしょうね。「ヒューマンファクターのエンジニアになりたい 」と思ってる子供達はあまりいないと思うのですよ。このポッドキャストを聞かせたら、未来のヒューマンファクター・エンジニアを育てることになるかもしれませんけど。私は、よく整理され、考え抜かれたものを高く評価しています。だからこそ、プロダクトデザインは魅力的で、使いやすく直感的なものを作ることができるのだと思います。ですから、私はある種の整理整頓の仕事をしているのかもしれないですね。
レイモンド・イン:
今いらっしゃる場所から一番近いダンキン・ドーナツまでの距離はどれくらいでしょう?
アリソン・ストロクリック:
たぶん4分くらいでしょうか。オフィスとこのレコーディングスタジオ間の8分のドライブ中に、数店みかけましたから。なので3~4分というところでしょう。
レイモンド・イン:
アリソン・ストロクリッチ氏との対談パート1はいかがでしたでしょうか。次回も、HMIとヒューマンファクターについてより深く掘り下げていきますので、ぜひお聞き逃しなく。The Tech Between Usポッドキャストはこのテクノロジーに関する考察のごく一部です。より知識を深めたい方は、mouser.com/empowering-innovation のEmpowering Innovation Together テクノロジーシリーズにアクセスいただくと、技術記事、使用例など数多くをご覧いただけます。