Skip to main content

パート2: ヒューマン ファクターと HMIの未来(続編)

EIT 2024 | Topic 3 | HMI | Podcast Part 2
ポッドキャスト: 
The Tech Between Us

「The Tech Between Us」へようこそ。引き続き Emergo Ul社のシニアリサーチディレクターのアリソン・ストロクリックさんをお迎えして、HMIとヒューマンファクターに関するお話を伺っていきます。この対談の前編をお聞き逃しの方は、Empowering Innovation Togetherのウェブサイトへアクセスしてください。
多くのOEMが独自のヒューマンファクターチームを持ち、設計プロセスの初期段階に真剣に取り組んでいるとおっしゃいました。彼らは、お話しいただいた手順のすべてを踏んでいるのでしょうか?厳密な試験とその反復を行っているのでしょうか、確認されたことはありますか?それとも、建前としてでしょうか?
そうであったら本当に素晴らしいのですが、実際にはそうではありません。メーカーが台頭してきているのは確かで、中には独自のヒューマンファクターチームを持っているところもあります。同僚と先ほど話していたのは、あるお客様のことで、ヒューマンファクターに真剣に投資し、多くの事柄をこなし、細心の注意を払われているとのことです。ですが、建前だけの取引先もあります。FDA用にこうしたことをしなければならないと判り、ヒューマンファクター実証テストと書かれた報告書が欲しいと要求し、彼らには時間がないので、良い結果を早く欲しいと言うのです。ですから、さまざまですね。再度アメリカ中心の話になってしまいますが、FDAの最終ガイダンスが2016年に発表されたにもかかわらず、いまだにそれを開発努力の一環として取り入れていない人たちもいるわけです。
とにかく早くから頻繁に行うことが成功への道です。この仕事を20年近く続けてきた私の経験から言わせてもらいますと、それは間違いありません。規制の観点からも、商業的、市場競争の観点からも、早くに始めて、何度も反復することが望ましいです。しかしまだ人々はヒューマンファクターに関しては、学習曲線を登っている段階だと思います。それから医療分野は、より競争の激しい他の産業と比べると、少し遅れ気味かと思います。例えば、消費者向けの自動車産業などでは、ユーザーに製品を気に入ってもらい、購入意欲を引き立てる必要があります。それが主要な原動力になります。一方で、安全で効果的な製品を開発することに重点を置いている企業があります。それはもちろん重要なことで、ユーザーなしでは実現できません。最終チェック時に焦点を当てるだけでは、大きな部分を逃してしまっていると言うことです。
レイモンド・イン:
先ほどの例ですね。

アリソン・ストロクリック:
その通りです。製品はそれ自身を物語るものですから、最終チェックでそう簡単に合格させるものではないのです。場合によっては、その製品が工学的に素晴らしいものであったとしても、誰もその電源の入れ方や使い方を知らないのであれば、結局はあまり意味がないことになるわけです。
レイモンド・イン:
まさにそうです。
レイモンド・イン:
医療業界では、これまでお話しいただいたようにOEMが良い製品を作るには非常に具体的な手順を踏んでいるようです。他の業界、例えば先ほどおっしゃった自動車業界や消費者業界はどうでしょうか。 
アリソン・ストロクリック:
そうですね、かなり幅広いと思います。私は消費者分野にはあまり詳しくないのですが、消費者向け製品にいくつか携わったことはあります。CPSCのような組織がいろいろあり、そこでは例えばベビーベッドや新生児用かご型ベッドなどの育児用製品の安全性に関する規則を定めています。自動車業界も、ヒューマンファクターエンジニアリングに関しては、かなり高度に規制されている分野だと思います。特に60年代から70年代にかけては、身体的人間工学に関する規格がいくつも発表されました。もちろん、身体的人間工学や人体測定データを基にしたデザインもそうです。私の同僚で、自動車業界に10年ほどヒューマンファクターの分野で働いていた女性がいます。彼女が初めてチームに加わったとき、「乗員パッケージ 」という言葉を教えてくれました。個人的にとても好きな言葉なのですが、聞いた情報によると、車内にいるキャビンや乗客という意味だそうです。これはトリビアナイトに出てきそうですね、出たら私のことを思い出してください。自動車設計にヒューマンファクターを適用するには、多くの確固たる基準や規制があります。例えば、どのようにシートを設計するか、特定の物のサイズの限界など、設計した車両が安全かつ効果的に消費者に使用されることを確認する必要があります。またNITSAが発表している基準や規制もたくさんあります。最初は人間工学や人体測定データに関する項目が多かったのですが、1990年代には、脇見運転や認知処理、作業負荷に関する基準や指針が追加されました。つまり、ドライバーの作業負荷とは何か、それをどのように管理し、どのように設計するのかなどです。自動車産業で興味深いのは、医療機器のように安全性の要素があることです。そして、医療機器と少し違うのは、人々が商品を気に入るという点で、より消費者に近いということです。
医療業界でも、もちろん、自社の製品を気に入って使ってくれる人を求めています。しかし、消費者側の意見を言いますと、私や家族、友人が医療製品を使う必要がない事を祈ります。しかし、自動車業界は非常に競争が激しいです。数年前に車を購入しましたが、私は最終的にユーザーインターフェイスに基づいて車を選択しました。それが私の仕事なので、驚くことではないでしょうが、二台の車のどちらにするかで迷いました。コントロールと画面、ユーザーインターフェイスを見て選び、購入しないディーラーの人に、「私には合わないと思いまして」と伝えました。すると、彼は「なぜですか? 何が問題なのですか?」と聞いてきました。なので私は、画面が二つあり、一つはタッチスクリーンで、もう一つがコントロールで、どの画面で何が機能するかが明確ではなかったと答えました。彼は、「まあ、慣れますよ」と言ったのです。これがヒューマンファクターの難問です。製品は機能し、人々は使用することができますが、少し難しく、混乱するようなことに慣れなければいけないけれども、適応できるということです。ただし、そのような製品は設計したくありません。ユーザーが適応しなくても済むように、ユーザーを中心に製品を設計すれば、ユーザーは正しく安全に使用できますよね。
ご質問の件に戻りますと、自動車分野にも厳しい規制があり、さらに競争力を高めるために商業的な要請もあります。一方、医療品に関しても、厳しい規制があります。消費者向けの医療製品もありますが、それはまた後でお話しするとして、病院で使われるベッドや輸液ポンプ、患者用モニタを設計する場合、それらの製品を使う看護師や医師は通常、調達プロセスで発言権を持ちません。そのため、一部のメーカーにとってはモチベーションが低いのです。ユーザビリティやユーザー満足度が必ずしも商業的成功の原動力になるとは限りません。一方、自動車業界では、原動力となるので、ユーザビリティとユーザー満足度という二つの側面が重視されています。
医療に話を戻しますと、医療用製品と消費者向け製品の境界線に入り込むような製品が登場していますね。美容、健康、ウェルネス製品、マスク、ニキビ用マスク、医療機器やフィットネストラッカーなどに接続するスマートフォン用アプリなどがあります。医療従事者や家族にデータを送信できるアプリもあります。消費者に隣接した空間では、製品の競争が激化しており、これによりユーザー中心設計が行われる度合いはさらに高まると思います。そのような製品、あるいは市販品ではなく処方箋が必要な家庭用医療機器がある場合、数年前からですが、ユーザーを中心とした設計が行われるようになったのは喜ばしいことです。というのも、医療機器が家庭で使われるようになった最初のきっかけは、「クリニックで使われている透析器がある。それを家に持ち帰ってもらおう」というものでした。その考えはそこまで軽率ではなかったと思います。確かに、企業にはトレーニングプログラムがあり、管理されていました。ユーザーインターフェイスは臨床ユーザー用にデザインされたものでありましたが、今では一般ユーザーの手に渡るようになりました。そして、現在は素人が家庭で使えるように設計された製品が増え、変わってきています。
レイモンド・イン:
そうですね。想像できます。輸液ポンプのお話をしてくださいましたが、あなたの車のディーラーでの状況と似たようなことがおこるのでしょうか。看護師や医師が「いや、これだと使い勝手が悪いので輸液ポンプにユーザーインターフェイスはけっこうです。別のものを持ってきてください」となるのでしょうか。

アリソン・ストロクリック: 
輸液ポンプの選択肢はないですが、市場で競争が激しい特定の医療機器においては選択できます。それが病院のベッドです。リクライニングの上げ下ろしは簡単にわかりやすくあるべきですよね。

レイモンド・イン:
ここで一息つきまして、Mouserが紹介する記事を見てみましょう。「2024 年以降のヒューマンマシン・インターフェイス: HMI の台頭」と言う記事では、タッチ、ジェスチャー、さらにはブレインコンピュータ・インターフェイスを含むHMIのテクノロジーを詳しく取り上げ、それぞれがどのように実装されているかを説明しています。mouser.com/empowering-innovation にアクセスしていただくと、記事全文とその他の記事もいろいろとお読みになれます。では、対話に戻りHMIとヒューマンファクターの将来について話し合いましょう。

レイモンド・イン:
ヒューマンファクターを考慮すると、テクノロジーやインタラクションは将来どのように発展していくとお考えですか。より詳細な部分にまで至るのでしょうか?また、 以前よりもそういったことが行われているのでしょうか?

アリソン・ストロクリック: 
私たちが向かう先は、さらに多くの刺激、多くの接続ポイント、多くのコミュニケーションが常に起こる場所だと思います。多ければ良いというわけではありませんが、私たちが挑戦し、管理しなればならない現実だと思います。そういった刺激を抑えるのに今私たちのスマートフォンでは「おやすみモードや集中モード」に切り替えることができますよね。同じように、ユーザーがどのように管理するかを私たちは常に気を配る必要があると思います。そう言ったもののいくつかは私たちが管理できない場合もありますよね。 もしかすると、かなり制約された環境で使用される製品を設計しているかもしれません。その製品がだれかによって使用されるのですが、人々が接している環境を考えてみてください。それが家庭であれ、臨床環境であれ、運転中の道路上であれ、ますます複雑で、騒がしく、気が散りやすい環境になっています。システム間や人間どうしの接続ポイントやコミュニケーションが増え、物事を複雑にし、製品の使用満足度を妨げるような可能性のあるものを取り入れているとも思います。ですから、何を開発するにしても、製品が他の何事とも無関係に使用されることはないということを心に留めておくことが重要だと思います。

レイモンド・イン:
なるほど。私も最近は人の関心を引く手段が多すぎると感じています。24時間365日、知り合いと連絡を取り合う必要はないのですよね。
アリソン・ストロクリック:
100%賛成です。ですからユーザーは通知される事柄をコントロールできるべきだと思っています。安全上、危険でなければの場合です。もし私の携帯電話が連続血糖モニターに接続されていて、血糖値が極端に下がってしまった時は、スヌーズ機能を使えるのはまずいですよね。ですから設計者としては、場合によって、ユーザーに「忙しいかもしれませんが、気に留めてください」と強行する必要もあります。医療機器、自動車、航空レーダーなどがそうです。けれども、他の分野では、もっと広く、もっと複雑で、もっと厄介な、誰かの実生活を基に製品を設計することがあります。私たちは皆、どんな環境であれ、より複雑でダイナミックな使用環境を想定して製品を設計していくと思います。それが結果的にミスや見落とし、エラーにつながることもあるわけです。
レイモンド・イン:
本日のThe Tech Between Usのポッドキャストはここまでです。 いかがでしたでしょうか。HMIのトピックについてさらに追及したい方はEmpowering Innovation Together ページをぜひご覧ください。mouser.com/empowering-innovationにアクセスいただくと、動画、技術関連記事などマウザーの豊富なコンテンツをお楽しみいただけます。