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In Between the Tech: Vista Solutions社 Peter Denzinger氏との対談

レイモンド・イン
「In Between the Tech」へようこそ。本日は、マウザーによるこれまでの産業用マシンビジョンについて考察をまとめ、本特集を締めくくりたいと思います。番組にはVista Solutions(ビスタソリューションズ)社のエンジニアリング担当副社長、ピーター・デンジンジャー氏をお招きし、この技術の発展の勢いについて、また今後の技術的な可能性についてお話を伺いたいと思います。マシンビジョンに関する貴重な見解にぜひご注目ください。

質問
ピーターさん、本日はご出演いただきありがとうございます。現在、ビスタソリューションズ社、エンジニアリング担当副社長を務めておられますが、御社について、またマシンビジョン分野での事業内容について少しお話をお聞かせいただけますか。

ピーター・デンジンジャー
当社はマシンビジョンのソリューションプロバイダーです。つまり、カメラ、ケーブル、PC、レンズ、ライト、スマートカメラなどの一般に出回っているテクノロジーはもちろん、その他身の回りにある汎用品を使い、マシンビジョンの事業を行っており、部品を自社製造しているわけではありません。また、当社はマシンミッションインテグレーターでもあります。つまり、PLCプログラミングは行いませんし、パネルも機械も作っていません。社員はみな、ビジョンに特化した仕事をしています。
私たちは基本的にビジョンツールボックスのあらゆるツールを使用し、ニッチ分野に注力しています。つまり、2D技術や3D技術、熱測定アプリケーションから人工知能アプリケーションまでを行っています。問題の解決には、スマートカメラのようなシンプルなものから、複雑な人工知能を実行するカスタム開発されたPCベースソリューションまで、幅広いソリューションを使用しています。ですから農業から建設、医療に至るまで、幅広い業界に貢献することができます。ある時はパン屋、またある時はタービンブレードメーカーにサービスを提供しています。

質問
人工知能の話題は毎日のようにニュースを賑わせています。長年この分野に携わってこられて、AIやマシンビジョン、またその補完技術は、今後どのような方向に向かってゆくと思われますか?

ピーター・デンジンジャー
今は、期待を膨らませすぎている状況ですが、おそらくこれも少し変わってくるでしょう。AIで今すぐ何かができると期待しすぎていますが、やがて幻滅期が訪れると思います。それに加えて、製造業は他の分野よりも若干敏捷性に欠ける傾向があります。
製造業はゆっくりとことを進めることを好み、できるだけ予測可能なことにしか手を出したがりません。では、今後どうなるのかというと、業界は今、インダストリー4.0と呼ばれる段階にあり、そのほとんどすべてがデータの取得に焦点を当てています。何かからデータを取り込むことです。ただ現在は、そのデータを使っても大したことはできていません。データを深く掘り下げていないからです。ですから次の段階は、最近取得できるようになったデータを実際に活用することだと思います。また、AIの本格的な普及に必要なものを、業界はようやく導入し始めています。
製造業では、モノのインターネットの導入が遅れています。あらゆるものがインターネットに接続されている今、当たり前のことのように思えますが、製造業に導入するには長い時間がかかるのです。大量のデータを保存し、実際にそのデータをすべて使用できるようにするために、準備を進めています。現在、あらゆるデータを取得し、その情報を提供できるセンサがあるかもしれませんが、データの保存については決まっていません。データを管理し、それをどこに保存すれば有益なのか、これまで誰も考えていなかったのです。今、実際にそれに取り組み始めているところだと思います。当たり前に聞こえるかもしれませんが、それがおそらくすぐ次に起こることでしょう。
では、もう少し視点を変えて、マシンビジョンに何が起こるのか考えてみます。例えば、マシンビジョンが製造業で次に実現しそうなことで、まだ実現できていないことは何でしょうか? 過去20年以上にわたってゆっくりと進歩してきた典型的なものを見てみると、解像度は少しずつ高くなり、スピードも少しずつ速くなっています。ただ、それが大きな突破口になると期待できるかわかりません。私が注目しているのは、プロセスモニタリングの領域です。現在、マシンビジョンは、製造業で、産業プロセスのガイド、部品の欠陥検出、測定、ある工程から他の工程への連携など、さまざまな問題を解決するためによく使用されています。
現在、人間に非常に依存している領域は、プロセスモニタリングです。何か問題が起きたのか? 何が問題なのか? 問題はシステムの範囲内であることが確認できるのか? マシンビジョンは、工場で作業員が工程に問題がないかを監視するのと同じように、監視作業に対応できます。今のところ、AIツールは、データを取得し、それを意味づけて使用できるまでには至っていません。ですから、産業分野でのAIの具体的な応用については、それが次のステップになるのではないかと思います。


いくつかのアプリケーションとデータの活用についてお話いただきましたが、マシンビジョンは、産業現場に適しているのがわかりました。産業用以外で、マシンビジョンを利用している、あるいは利用できる可能性のあるアプリケーションについて教えてください。

ピーター・デンジンジャー
マシンビジョンが製造業で成功している理由は、技術そのものが製造業に適合しているからです。反復可能なプロセス、予測可能なステップとオペレーションのある現場では、マシンビジョンは当初から非常にシンプルで、問題を解決することができました。今日、カメラはいたるところにありますが、産業プロセスもいたるところにあることにお気づきでしょうか。このテーマについて考えていて、すぐに気づいたのは、あらゆるものが産業化されているということです。すべてではありませんが、多くのものが産業化されています。
例えば、鉱業や農業、林業など、テクノロジーを活用したいと思えるプロセスは、すべて産業化されつつあります。出荷や配送が産業プロセスであるとは思わないかもしれません。アマゾンの時代の今、それも変わりましたが、従来は配送を産業プロセスだと考える人はいませんでした。パン屋を産業プロセスと考える人もいないかもしれませんが、実は非常に産業的な環境で食品を消費者に提供しています。このようにマシンビジョンは、産業化を足がかりに、こうしたさまざまな分野に導入されているのです。
またマシンビジョンの活用など思いもしなかった場所でも、カメラが設置されています。そして今や、産業以外の分野で、不適合や再現不可能なものに対応できる高度なデータ処理技術もあるため、単なる監視や画像取得以外でマシンビジョンを活用できるようになりました。自動化など期待もしていなかった環境でマシンビジョンを行うことができるのです。
よく知られているのは、有料道路のマシンビジョンがナンバープレートを自動的に読み取る事例です。カメラは、川の魚の数を数えるのと同じアルゴリズムを使っています。ある地点を通過し、外来種を検出し、その川にいるはずのない種類の魚が検出された場合は、音や警報が発せられ、研究者に画像を見てもらい確認するのです。AIのおかげで、こうした興味深いこともできるようになりました。
運転支援技術もよく知られています。単に情報を表示したり、ライトを当てたりするだけでなく、最終的には自動運転につながる運転支援技術を搭載した車です。多くの人がそんな車にすでに乗っていると思います。そのような最新の自動車に搭載されているカメラや LIDAR でもマシンビジョンやアルゴリズムが使われているのです。
すでにお気づきのように、最近はあらゆるものにカメラが搭載されています。かつてはカメラは動きや明暗の変化を検出するだけでしたが、もっとインテリジェントなことができるようになりました。ドアベルは動きの検出から人間の検出へと進化し、さらには個人の顔を認識できるようになりました。この機能はここ5年の間に出現し、当たり前のことになりました。手前味噌にならないよう、AIをあまり声高に称賛するつもりはありませんが、AIのおかげで、こうした新たな能力が与えられ、カメラはビジョンシステムへと進化できたのです。そして、カメラが存在するあらゆる場所でマシンビジョンによる進化が起きています。

非常に有意義なソリューション、または素晴らしい学習体験となったソリューションはありますか?

ピーター・デンジンジャー
もちろんです。当社がここしばらくの間、取り組んできたものの中で、既成概念にとらわれず、最も大きな成功を収めたものは、道路補修ロボットだと思います。多くの人の予想を裏切る成功でした。
これはトラックの荷台に乗って道路を3Dスキャンするロボットで、道路や駐車場の亀裂をシーリング剤で補修していくというものです。亀裂は、道の真ん中や、山の境界によく発生します。
ロボット開発を行う企業と提携して、このプロジェクトを進めており、当社はビジョン部分を担当しています。ビジョン部分は2つの技術から構成されており、その1つが3Dビジョンです。高速道路を走りながら3Dデータを取得し、実際の測定値を得ます。それから、この3D画像をAI技術で処理し、亀裂のある箇所を抽出し、ロボットがシーリング剤を吐出しながら移動する経路を作成します。このようなことができるようになったのは、技術的に非常に素晴らしいことです。道路での作業は非常に危険ですからこのようなロボットの活用は安全面において大きな利点です。特に携帯電話世代にとっては、非常に危険な作業です。道路の安全と維持のために命を危険にさらしている人々にとって、危険は増すばかりです。ですから、本当に大きな影響を与えるものになると思います。

ロボットといえば、産業用マシンビジョンによって、工場現場で人間と機械が調和して働くことが可能になりました。極端な温度、圧力、水中など、人間にはふさわしくない環境でロボットとの協働関係を活かすには、部品レベルでどのような進歩が必要でしょうか?

ピーター・デンジンジャー
人間が立ち入るべきではない環境とその範囲は年々拡大しています。しかし、人間の安全を守りたいと願い、またそれが可能になった今、以前は、人間がやらざるを得なかったような危険な役目はもう人間がしなくていいようになります。もうかなり前から、人間が立ち入るべきではない環境には、カメラが設置されてきました。その結果、採掘現場での爆風にも耐えられるような、堅牢なカメラを実現する優れたテクノロジーが数多く生まれています。セルフクリーニング機能、防水カメラ筐体、もちろん冷却機能付きのものもあります。今では、ほとんどすべてのカメラが熱の問題を抱えています。冷却機能を搭載するとカメラの容量が大きくなるため、冷却を行わずに部品が高温に耐えられるようにできれば最高です。また、ビジョンシステム全体に目を向けると、もちろん部品はカメラだけではありません。AIシステムとは、決して小さなものではなく、GPUを搭載した回路基板からフルPCまで、処理装置が必要になります。
もちろん、これを大きな箱に入れて空調で冷却したり、防水加工をしたり、いろいろなことはできます。しかし、サイズがかさばることが大きな問題になります。このかさばりをどうするのか? 私は2つの進歩があればいいと思います。
1つは、摂氏50度というのは、冷却する必要が出てくる温度だということです。カメラは高温を嫌います。50℃を超えると、熱を光として感知し、センサのダークノイズが増え、画質が低下するからです。また、電子部品の寿命も、特に画像センサは50℃を超えるほど短くなります。ですから、その境界を少し押し広げるような材料の進歩があれば、60℃まで上昇させることができ、大きな効果が期待できます。
おそらく、より現実的に検討すべきなのは小型化で、AI処理ハードウェアを小型化して、同じ筐体に搭載できるようにすることです。採掘現場や鋳物工場に冷蔵庫を設置するのは望ましいことではなく、作業の邪魔になります。できるだけ小さくする必要があります。これはデータ転送にも当てはまります。ですから、安全性を保つための方法の1つは、カメラから直接画像を送信することです。
また、産業環境では、ワイヤレスは敬遠されています。ワイヤレス技術の進歩によって、ワイヤレスデータ転送の信頼性が向上し、データ転送距離も延びると思います。5Gの利用も増えるでしょう。現在、5Gは、WiFiネットワークから非常に遠く、有線でもアクセスできない場所にカメラを置くようなアプリケーションで多く利用されています。今後は、カメラに搭載される技術がさらに増えてくると思います。

ここまで、マシンビジョンの可能性についてお話を伺い、いくつかの課題についても指摘していただきましたが、今後、マシンビジョンが直面する大きな課題や障害にはどのようなものがあるでしょうか?

ピーター・デンジンジャー
興味深い質問ですね。障害のなかには、問題解決のきっかけとなるものありますから。
先ほども申し上げましたが、今や、あらゆるものがデータを取得しているか、今後、データを取得するようになる可能性があります。インダストリー4.0はこれを大きく推進しました。データこそ、インダストリー4.0の実現に必要な最初の駒であり、誰もがそこに注目したのです。しかし、実際には、そのデータを保存・管理し、データを活用して何かができるよう、データ変換するまでの準備ができていませんでした。現在、障害となっているのは、実際に自分の思い通りに活用できる形で、データを取得する良い方法がないことだと思います。
マシンビジョンやAIを始めたいと思っている人には、データ収集に重点を置きすぎているように聞こえるかもしれません。しかし、実際にAIを動かすには、データが必要なのです。役に立つデータを得るには、AIを訓練する必要があります。その両方が必要なのですが、よく目にするのは、パズルの一部分にしか目を向けず、それで問題全体を解決しようとしていることです。
AIがデータを使って何かを行うには、その前にデータを作成する必要があります。そして、AIがある程度のデータを取得したら、今度は、そのデータを使って新しいシステムを作ることが可能になるはずです。

レイモンド・イン
今回の「In Between the Tech」、お楽しみいただけたでしょうか。このポッドキャストは、急速に普及が進む「産業用マシンビジョン」に関するマウザーの特集コンテンツの一部です。さらにこのテーマについて、Empowering Innovation Together全シリーズの動画、技術記事などのコンテンツをご覧になるには、mouser.com/empowering-innovationにアクセスしてください。