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The Tech Between Us パート1

レイモンド・イン:産業革命によって移動手段や通信手段を機械に依存するようになり、暮らしが快適になると、地球規模の発電に化石燃料が欠かせなくなりました。かつて蒸気船の航行や紙の製造に利用されていた、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーは、遠くに追いやられるようになりました。その後、再生可能エネルギーが再び注目されるようになったのは、1970年代に石油危機が起こり、化石燃料の供給が途絶えたときです。実はその頃から、再生可能エネルギーソリューションへの取り組みが本格的に始まったのです。それから50年を経た今、世界のエネルギー需要の26%を再生可能エネルギーが占め、さらに10%を原子力発電が占めています。再生可能エネルギーと言えば、ソーラーパネルや風力発電を思い浮かべますが、今日はそれを動かすエンジンに焦点を当てたいと思います。高速道路を運転していて巨大な風力タービンの前を通り過ぎても、持続可能なエネルギーを有効活用するために必要な保管、監視、配電など、その設備の背後にあるエコシステムは見えないものです。

レイモンド・イン: 再生可能エネルギー、特に重要となるエネルギー貯蔵システムについて理解を深めるために、今は米国エネルギー省・エネルギー貯蔵研究ディレクターであるイムレ・ギョク博士をお招きしています。ギョク博士は、エネルギー貯蔵が注目され始めた頃からエネルギー省(DOE)でこの技術の研究を牽引してこられ、その結果、今日、エネルギー貯蔵は電力事業で最も熱い話題のひとつになるまでに成長しました。過去20年間、幅広いアプリケーションに向けさまざまなエネルギー貯蔵技術に関する取り組みを指揮してこられ、州、コミュニティ、自治体と提携して、グリッド規模の実証を行う多数のプロジェクトを実施されてきました。最近では、長期エネルギー貯蔵や「エネルギー正義」に取り組んでおられます。ギョク先生、「Tech Between Us」にようこそお越しくださいました。
イムル・ギョク: よろしくお願いします。

レイモンド・イン: 今日はご出演いただきありがとうございます。先生は、約30年にわたりエネルギー研究をされてきたわけですが、その間に、再生可能エネルギー、特にその貯蔵システムに対する世界お反応や考え方はどのように変わってきたでしょうか?

イムル・ギョク: 非常に大きく変わりました。

レイモンド・イン: 良い意味ででしょうか?

イムル・ギョク: もちろんです。少なくとも私はそう思います。23年ほど前、私はこのエネルギー貯蔵プログラムを引き継ぎました。実はその前は蓄熱もやっていたのですが、電力貯蔵は23年ほど前に始まったもので、予算も乏しいものでした。当時、電池の研究をしている人はいましたが、エネルギー貯蔵に関するプログラムはこれが初めてで、グリッドにエネルギー貯蔵の未来があるとはほとんど誰も思っていませんでした。

レイモンド・イン: 必要性を感じなかったのでしょうか、それとも技術に対して懐疑的だったのでしょうか?

イムル・ギョク: 必要性はあったのですが、当時、再生可能エネルギーは、まだ始まったばかりだったのです。

レイモンド・イン: そうですね。

イムル・ギョク: ですから、再生可能エネルギーが注目されるまでには時間がかかりました。当時は化石燃料発電の全盛期で、そのようなプログラムのまさに初期段階でした。私たちはすべてを自分たちでやらなければならず、研究室で材料の研究から始めました。リチウムは出てきたばかりで、非常に高価でした。そこで、材料の研究から始めて、デバイス、システムに取り組み、次に展開し、アプリケーションを最適化するための分析を行いました。そして、安全性が不可欠であり、適切なパワーエレクトロニクスを開発する必要があることに気づきました。規制の問題や規範、規格にも取り組み、年2回のファイナンス・サミットを後援し、最近では社会的公平性と長期エネルギー保管にも取り組みました。

レイモンド・イン: つまり、当初はエコシステムも何もなく、古い二次電池のニッケル・カドミウム電池に取り組む材料もほとんどない。エネルギー省で研究を開始された当初は、まさにパイオニアだったのですね。

イムル・ギョク: ということですね。しかも、非常に少ない予算でした。

レイモンド・イン:今後、再生可能エネルギーがますます普及し、エネルギーの主流を占めるようになることを期待しています。

イムル・ギョク: 確かに普及は進み、人気も急激に高まっています。

レイモンド・イン: それは素晴らしいですね。

イムル・ギョク: 最初は進歩が遅かったのですが、エネルギー貯蔵分野の成長は飛躍的に加速しています。今では43億ドルの市場規模に成長し、政権の重要課題にもなっています。

レイモンド・イン: 重要な課題となるのは、研究でしょうか、それとも普及展開でしょうか?

イムル・ギョク: いいえ、研究、普及展開、すべてです。

レイモンド・イン: つまり、ありとあらゆることが課題になるわけですね。

イムル・ギョク: ええ、その通りです。

レイモンド・イン: わかりました。エネルギー省のエネルギー貯蔵プログラムについてよく知らないリスナーのために、材料、普及展開、規制、資金調達についてお話しいただきましたが、現在取り組んでおられるプロジェクトにはどのようなものがあるのでしょうか。

イムル・ギョク:あらゆる分野に取り組んでいます。新素材の開発を行い、安全性にも力を入れ、規制の問題にも取り組んでいます。また、普及活動も行っています。時間と労力をこれらすべてに注いでいます。もちろん、これを私一人でやっているわけではなく、国立研究所と連携して行っており、非常に貴重な取り組みになったと思います。まず、ニューメキシコ州のサンディアから始め、ワシントン州のパシフィック・ノースウェスト研究所、そして最近ではオークリッジやアルゴンヌでの小さな取り組みを行いました。

レイモンド・イン: パシフィック・ノースウェスト研究所の記事を読んだ覚えがあります。あれは、先生が主宰されている研究所だったのですか?

イムル・ギョク: 確かにサンディアとパシフィック・ノースウエストは、私が主宰している研究所です。

レイモンド・イン: なるほど。すごいですね。どちらも有名で、権威ある研究所です。
イムル・ギョク: また、国立研究所を通じて、大学、バッテリーベンダー、州、自治体、地方の協同組合や団体とパートナーシップを結んでいます。

レイモンド・イン:まさに産学官民のパートナーシップですね。

イムル・ギョク: そうです。私たちは、資金が続く限り、協力してくれる人なら誰とでも協業しようと思っています。

レイモンド・イン: そうですね。ここまで、いくつかのプロジェクトについてお話ししてきました。では、エネルギー貯蔵システムとはどのようなもので、なぜ再生可能エネルギーのエコシステム全体で必要とされるのでしょうか?

イムル・ギョク: 昨今のエネルギー事業の本質的な課題は、脱炭素化であり、あらゆるものを脱炭素化する必要があるということです。ですから、電力部門は明らかにグリーンエネルギー

に頼らざるを得ないのです。

レイモンド・イン: そうですね。

イムル・ギョク: 交通部門は電気自動車に頼ることになるでしょうし、農業、建築、製造もそうでしょう。そして、これらの分野はすべて、まず電化され、次に脱炭素化されなければなりません。つまり、最終的にはすべて再生可能エネルギーに依存することになります。しかし、

ご存知のように、再生可能エネルギーは変動しやすいものです。

レイモンド・イン: 確かに。

イムル・ギョク: 夜に太陽は出ませんし、風もいつも吹いているとは限りません。そこで、蓄電が必要になるのですが、これには対称性があるのです。送電は、エネルギーを生成した場所から利用する場所にエネルギーを送りますが、エネルギー貯蔵は、生成した時から利用する時にエネルギーを送ります。つまり、エネルギー貯蔵は新しい送電なのです。

レイモンド・イン: おっしゃるように、時間を軸に送電すれば、利用したい時にいつでも利用できるようになります。必ずしも利用したい場所ではなく。

イムル・ギョク: しかし、ご存知のように、私たちは多くの点で分散化しているため、伝送は変わりつつあります。屋根の上に太陽光パネルなどを設置して、ローカルエネルギーを創り出そうとしています。蓄電池や再生可能エネルギーを組み込んで、電力網の中で半独立したミニグリッドやマイクログリッドがますます増えているのです。

レイモンド・イン: そうですね。都市全体のエネルギーを集める広大なソーラーアレイとは対照的に、マイクログリッドとそれに接続するマイクロインバータは、一軒の家、一棟の建物のためのものです。

イムル・ギョク: そうです。このすべてを手に入れることができるのです。

レイモンド・イン: そうですね、そのすべてが電力インフラ全体に貢献するわけですね。

"イムル・ギョク: ええ。それを機械として見れば、カナダの一部も組み込んだこの国全体のグリッドはテクノロジーの最大の成果の 1 つです。"

レイモンド・イン: そうですね。

イムル・ギョク: そして、ヨーロッパや他の国でも同様の状況が見られますが、技術的に素晴らしい成果を上げています。

レイモンド・イン: では、エネルギー貯蔵システムはどのような要素で構成されているのでしょうか? ハードウェアと伝送のエコシステムのように思えますが、少し詳しく説明していただけますか?

イムル・ギョク: わかりました。蓄電設備は、最初に材料、材料の部品、バッテリーがありますが、部品のほとんどがパワーエレクトロニクスであり、インフラが必要です。ある意味で、私たちが最も力を入れているのはバッテリーの部分ですが、他の部分も同様に重要で、まだまだ開発の余地はたくさんあります。ですから、まず化学物質に焦点を当て、次にパワーエレクトロニクスに焦点を当て、インフラはまだ開発されていない3番目のものになります。

"レイモンド・イン: では、インフラの観点から、バッテリーの化学的性質や関連する電子機器のほかに、どのようなものがインフラ開発に必要なのでしょうか。

インフラ開発にはバッテリーの化学的性質や電子機器以外にどのようなものが必要でしょうか。"

イムル・ギョク: そうですね、規制構造ですね。

レイモンド・イン: つまり、物質的なものではないのですね。

イムル・ギョク:  そうですね。というのも、施設を建設する際には、公共事業委員会や地方自治体などと協力しなければなりません。バッテリーやパワーエレクトロニクスを搭載するとして、それを収容する場所には、空調や消火設備も必要です。そのため、余分な費用がかかります。また、それを敷地に設置する必要があり、その敷地の費用もかかります。そして、建築検査官や消防署の検査もあります。それから...

レイモンド・イン: 電力会社ですか?

イムル・ギョク:そうです、電力会社です。相互接続です。

レイモンド・イン: なるほど。 

イムル・ギョク: それと弁護士です。契約が必要になります。

レイモンド・イン: そうですよね。

イムル・ギョク: 問題は、再生可能エネルギーに関する契約ほど、契約が発達していないことです。再生可能エネルギーは今ではほとんど自動化されています。エネルギー貯蔵はそうではなく、基本的に契約書はすべて手書きで書かれています。

レイモンド・イン: つまり、プロバイダーと自治体、あるいは実際に貯蔵システムを導入する人たちの間で、ほとんど個別のカスタム契約が結ばれるわけですね。

イムル・ギョク: ですから、設備を接続して稼働させるには、これらすべてを解決する必要があります。もちろん、こうしたことにはお金がかかるため、インフラは装置本体と同じくらい高額になります。

レイモンド・イン: 実際のエネルギー貯蔵装置と貯蔵システム、それに太陽光発電やタービンなどの設備ですね?

イムル・ギョク: 太陽光発電は含まれていません。

レイモンド・イン:そうですか。それは別の数字になるわけですね。わかりました。

レイモンド・イン: それでは、次にバッテリーの化学的性質についてお話しを伺いたいと思います。少し前にテスラがリチウムイオンやリチウム技術を使った大型のパワーウォールを発表して大きな話題になりましたが、先ほどおっしゃったように、リチウムはもう30年も前から使われています。エネルギー省では、バッテリーの化学的性質についてどのような調査をされているのでしょうか?

イムル・ギョク: そうですね、リチウムイオン技術を反対側から見てみました。
レイモンド・イン: 反対側からですか?

イムル・ギョク: まだ始まったばかりで、非常に高価なものでしたが、十分に立証されたシステムであることが証明されました。そして、現在、蓄電技術の主流となっており、少なくとも今後10年間はこの地位は変わらないと思っています。ただ、そこには問題があります。というのも、私は建物など、定置型蓄電に興味を持っているのですが、これにはライバルがいるのです。それは車載用蓄電です。電気自動車も増えてきましたが、自動車にはリチウムが必要です。同じようなエネルギー密度を持つ技術は他にありません。運輸業界には十分な資金があります。一方、定置型蓄電は、エネルギー密度が低くても大丈夫なのです。低価格でさえあれば。

レイモンド・イン: コストとのトレードオフですね。
イムル・ギョク: そうです。ですから、サプライチェーンが有限であることを考えると、リチウム電池は自動車に使われ続け、定置型用途は別のところに目を向ける必要がありますが、これは10年ほどで実現するでしょう。

レイモンド・イン: わかりました。それでは、一番研究されているのがその分野なのですね?
イムル・ギョク: そうですね。では、どんなものがあるのでしょうか? まず、フロー電池があります。バナジウム、鉄、さらには有機物など、さまざまな地球に豊富な元素を使用できます。そして、亜鉛マンガン電池のように亜鉛があります。亜鉛空気があります。
レイモンド・イン: 亜鉛空気?

イムル・ギョク: 亜鉛空気です。はい。

レイモンド・イン: それなら豊富にありますね。

イムル・ギョク: その通りです。だからいいのです。

レイモンド・イン: そうですね。

イムル・ギョク: またナトリウムイオン電池もあり、これはリチウムを、元素表では近くにあるナトリウムに置き換えたものす。

レイモンド・イン: なるほど。

イムル・ギョク:  しかし、ナトリウムの方が圧倒的に安く、明らかに豊富にあります。ですから、有望な選択肢がたくさんあるわけです。しかし、問題は、そのどれもがまだ技術的に完成しておらず、商業的に実用化されていないことです。

レイモンド・イン: わかりました。それが実用化されるのは、おそらく10年後とお考えになっているようですね。

イムル・ギョク: いいえ、それよりも早く実用化されるでしょうが、少なくともあと10年は市場を支配することはないでしょう。それが私の推測です。

レイモンド・イン: 先ほどフロー電池とおっしゃっていましたね。この言葉は耳にするのですが、フロー電池とは何かがよくわかっていないのですが。

イムル・ギョク: 基本的には、大きなタンクが2つあると考えます。

レイモンド・イン: はい。

イムル・ギョク: そして真ん中には、実際に電気を生成するものがあります。異なる2つの液体を中央のユニットに送り込むと、片方の液体から電子を奪って電線に送り込みます。そして、その逆で電気をシステムに流すと、またその液体を充電します。つまり、2つの液体の間にポテンシャルが生じるのです。フロー電池には、電力とエネルギーが異なるという優れた特徴があります。エネルギーはタンクの大きさによって変わります。

レイモンド・イン: なるほど、基本的にポテンシャルなんですね。タンクの大きさで全体のポテンシャルが決まるのでしょうか?

イムル・ギョク: そうです。そして、電力は、実際の電力を生成する中央のユニットから供給されます。

レイモンド・イン: では、電子を必要な場所にどれだけ速く送ることができるのでしょうか。
イムル・ギョク: もちろん、タンクには地球上に豊富に存在する材料を使いたいものです。もちろん、その中には電気的な効力が弱いものもありますが、あえてこちらを使うこともできます。その場合、ユニットが大きくなり、フットプリントが失われます。

レイモンド・イン: なるほど。バナジウムと鉄のことですね。資源の面から言えば、リチウムはどうなるのでしょうか。つまり、使い果たしてしまうのか、それとも誰もが電気自動車を持てるほどの量がまだ残っているのでしょうか。

イムル・ギョク: はい、かなりの量のリチウムがまだあります。しかし、リチウムが実際に採

掘される国はほんの一握りです。

レイモンド・イン: そうなんですか。

イムル・ギョク: 最近、アフリカのある国がもうリチウムを売らないと決めたようです。リチウムが欲しければ、自国にバッテリー工場を作ることができます。

レイモンド・イン:なるほど。また地政学的な話ですね。

イムル・ギョク: その通りです。もちろん、中国はリチウムの大口ブローカーです。世界のリチウムの多くを購入し、完成したバッテリーを販売しています。バッテリーに特に優れている他の国は韓国と日本です。

レイモンド・イン: アジアに集中しているのですね。

イムル・ギョク: そうですね。ほとんど太平洋を超えた地域です。そして、現在の大きな推進力は、米国に工場を持つことなのです。

レイモンド・イン:さて、未来に向けた次の質問は、番組共催パートナーであるビシェイからです。ビシェイはエンジニアによる次世代の新製品開発に貢献する信頼のメーカーです。詳しくは、mouser.com/vishayをご覧ください。

レイモンド・イン:  今後、数十年先を見据えて、どのような可能性があるとお考えでしょうか。地球に最も影響を与えるのはどの分野でしょうか?

イムル・ギョク:  先ほども申し上げたように、すべての分野に可能性があります。私たちは、経済活動や生活のあらゆる部分を脱炭素化しなければなりません。そして、グリーンエネルギーとエネルギー貯蔵は成長し、やがでユビキタスになるでしょう。将来的には、発電と負荷のバランスを取るために、あらゆる場所に設置する必要があります。これらは私たちの未来に必要な機能なのです。

レイモンド・イン: イムレ・ギュク博士との対談の第1部をお楽しみいただけたでしょうか。第2部でも引き続きお話を伺いたいと思いますので、どうぞお聴きください。The Tech Between Us Podcastは、グリーンエネルギー貯蔵システムについて取り上げたマウザーの特集コンテンツの一部です。さらに詳しく知りたい方は、mouser.com/empowering-innovationにアクセスすれば、Empowering Innovation Together全シリーズの記事、動画、ユースケースなどのコンテンツがご覧いただけます。

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