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マシンビジョンを使った欠陥検出

Juan Ibarra(マウザー・エレクトロニクスへの寄稿)

選別・梱包施設における青果物の選別作業は複雑です。どんな製品でも、大きさ、色、欠陥など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。しかもこの作業は、品質を落とさずに消費者に届けるため、非常に迅速に行わなければなりません。以前はこれをすべて手作業で行い、多くの人が果物を一つひとつ手で選別し梱包していました。現在では倉庫の大小を問わず、この作業はマシンビジョンによって合理化されています。質の高い光照射プラットフォーム、画像収集ハードウェア、微調整されたソフトウェアを使用すれば、産業機械は正確な欠陥検出に欠かせない良質の画像を取得できます。このようにしてマシンビジョンは効率性、品質、信頼性を大きく高めてくれます。

複雑な欠陥検出


欠陥検出の要件は小売店と顧客によって異なります。特に食品の場合、検査時の状態によって賞味期限が変化します。それだけでも十分複雑ですが、欠陥の分類を人間の目に委ねると主観的になりがちです。しかも、特に食品包装工場では、これらすべてをとても迅速に行わなければなりません。医療業界のような完璧な精度は不要ですが、作業を迅速かつ確実に行う必要があります。例えば、1秒間に15個のリンゴを処理するコンベアが6本以上あり、複数の機械が稼働し、毎日1時間当たり数トンの製品を処理するといったケースです。

産業環境も欠陥検出の大きな課題となっています。食品包装工場は粉塵が多く温度変化が激しいため、センサにとって非常に過酷な環境です。40°C以上の高温下で空気中に粒子が舞っていても、機械は正常に動作しなければなりません。

マシンビジョンで進歩する欠陥検出


現在、欠陥検出では手作業の目視検査に取って代わる主要技術のひとつとしてマシンビジョンが採用されています。このシステムでは、光学デバイスとセンサから実物体の画像を自動で受信して処理します。人間の視覚は電磁スペクトルの可視域に限られていますが、マシンビジョン技術はガンマ波から電波まで、全スペクトルをカバーします。マシンビジョンと画像処理アルゴリズムを組み合わせれば、従来の方法では不可能だった精度、規模、速度で欠陥検出のタスクを完璧にこなすことができます。

マシンビジョンは欠陥検出の効率を上げ、リアルタイム性能を強化し、手作業を減らすことができるため、大規模な産業プロセスに欠かせない技術となっています。このような理由から、マシンビジョンは知的製造の主要技術として台頭するようになりました。最近では電圧、カメラ、信号、パルス、ソレノイドの破損など、セル診断があらゆるソフトウェアに組み込まれています。どれも多くの自己診断を搭載することができ、システムの持続的有効性と信頼性を確認すべきときに機械技術者や電子技術者に警告することができます。

マシンビジョンシステムの背景技術


産業環境における大半の外観検査システムは、分類を実行するために光照射プラットフォーム、カメラなどの画像取得ハードウェア、画像処理アルゴリズムで構成されています。コンピューターが画像の特徴を理解して分析し、それに基づいて対処するには、画像処理と分析が不可欠です。

マシンビジョンシステムは、紫外線、不可視光、赤外線など幅広い光スペクトルを使用して光照射プラットフォームを構築します。欠陥の種類によって最適な光の種類は異なるため、テストが必要です。とはいえ、マシンビジョンシステムが見るのは色だけではありません。果物の葉緑素の含有量など、化合物を測定することもできます。そのため色だけで判断するよりも正確に果物の成熟度を測定できます。欠陥も同じように、へこみや傷はそれぞれスペクトルの特徴が異なります。センサをカメラや照明と組み合わせて使えば、より広範囲の欠陥検出が可能になり、見た目にはわからない腐敗も検出できます。適切なスペクトル波長を使用すれば、非接触で特定の欠陥を検出することもできます。

もちろん、どんなに高機能の光照射システムとカメラを使っても、それだけでは画像しか生成できません。コンピューターのソフトウェアで画像を処理し、判断し、ソレノイドを作動させて不良品をベルトコンベアから取り除く必要があります。それにはハードウェア、ソフトウェアプラットフォーム、ドライバ、ネットワーキングプロトコルなどが必要です。システム・オン・モジュール(SOM)はこうした開発プロセスを簡素化し、センサ、カメラ、モノのインターネット(IoT)システムを組み込むためにしばしば使用されています。Digi International ConnectCore® 93 SOMもそのひとつで、医療、産業、エネルギー、輸送などの幅広いアプリケーション向けに設計されたSOMです。ハイエンドのエッジデバイス用で、高性能の計算・カメラインターフェイスを提供しているので、コネクテッド組み込みデバイスに産業レベルの信頼性を実現するのに理想的です。特筆すべきスペックとして、Cortex-M33コア、人工知能/機械学習(AI/ML)用Arm Ethos U65マイクロニューラル・プロセッシングユニット、電力効率を最大化するNXP電力管理集積回路があります。

AIとディープラーニングで変化するマシンビジョンシステム


ためらいがちに使われ始めたAIも、今では製造プロセスにどんどん導入されています。AIを導入する前は、解析形態学に基づいて画像処理アルゴリズムを開発し、閾値を作成し、測定と比較を行って欠陥を検出する必要がありました。すべてが複雑に絡み合い、ほぼ完全な手作業だったため、結局試行錯誤を繰り返すばかりでした。AIとディープラーニングを使えば、数千枚の画像を取得し、分類してから、そのデータに基づいてAIをトレーニングできます。

AIは人間の迷いや主観を取り除き、マシンビジョンシステムの信頼性を保証します。この最初のトレーニングデータが重要です。手作業のプロセスは今もありますが、毎年異なる要件やシステムが出現するので、こうしたディープラーニングのアルゴリズムを継続的にトレーニングすることが不可欠です。ただし、マシンを展開して画像をコンスタントに自動保存することができるので、変更が必要な場合は、対処に必要なデータを利用できます。進歩に伴い、AIは産業環境において間違いなく中心的な欠陥の検出・分類方法となるでしょう。

産業環境における将来のマシンビジョン


この記事を書いている時点で、こうしたすべての情報を処理するには、非常に高価な基板を搭載した非常に強力なコンピューターが必要ですが、こうしたマシンとシステムは大型です。将来的にはこれらも洗練されて、高価なシステムはより小さなシステムに組み込まれ、いずれカメラ自体に搭載されるかもしれません。どんなものでも最初は嵩高で、次第に安価で使いやすくなるものです。そして最終的には、5万枚の画像を撮影しなくても欠陥を分類できるようになるでしょう。マシンビジョンのトレンドがこのまま続けば、おそらくすべてが簡素化され、電子システムのコストも下がり、すべての要素が一つの包括的システムに統合されるでしょう。

欠陥検出にはもうひとつ、内部欠陥の検出という大きな進歩があります。例えば、農作物の分類の場合、食品メーカーはスペクトロメーターを使用して果汁の量、糖度、脂肪含有量を検出することができます。今のところこうした高度なセンサは非常に高価で、較正も複雑ですが、顧客の期待の継続的な高まりとともに、スペクトロメーターに基づくセンサの利用が増え、メーカーは顧客サービスのレベルをもっと高められるでしょう。

まとめ


長年、欠陥検出は複雑で、特に食品の欠陥検出には手を焼いてきましたが、マシンビジョンは高品質の光照射プラットフォーム、画像取得ハードウェア、微調整されたソフトウェアを活用して、欠陥検出の改善に欠かせない質の高い画像を取得することができます。将来、技術が進歩し新たな技術が登場すれば、マシンビジョンシステムによって欠陥検出の効率、品質、信頼性は引き続き向上するでしょう。