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トークセッション・ゲスト最前線で取り組む Freespira 社長サイモン・トーマス氏

 へようこそ!本日は、マウザーエレクトロニクスより、デジタル治療について考察をまとめ、皆さまにお届けしたいと思います。 本日は、Freespira社のサイモントーマス社長にお越しいただきました。この技術の進展の勢いについて、

そして、この分野におけるエンジニアの活躍について、色々お話をお伺いしたいと思います。

この革新的な分野における彼のユニークな見解にご注目ください。

サイモンさん、In Between the Tech へようこそいらっしゃいました。はじめに、サイモンさんにとって、デジタル治療とは?その定義について、お聞かせください。

弊社も加盟している米国の主要な業界団体であるDigital Therapeutics Alliance

によれば、デジタル治療は医学的な疾患や疾病の治療管理予防のために、高品質なソフトウェアプログラムを活用しながら、エビデンスに基づく治療的介入を行うものです。

私は、デジタル治療はまさに医療機器の一部だととらえています。これまで患者のモニタリングやその他の治療法において医療機器の分野に従事して参りました。そのためか、デジタル治療は、一種の医療機器だと考えています。 現在、デジタル診療のほとんどがソフトウェアとして利用者により通常は携帯電話やタブレットにダウンロードされています。

処方箋を求めたデジタル治療を受けるには、アプリへアクセスし、臨床医、通常は医師から処方箋を受領する必要があります。専用のハードウェアを活用するデジタル治療もあります。アップルウォッチなど、毎日の血圧や二酸化炭素の状態をモニタリングするために活用されるウェアラブルの多くを、本当にデジタル治療としてカウントすべきかどうかは、議論の余地があるかもしれません。

米国の業界団体が定義するデジタル治療について、重要なポイントは、真の治療法と認められるためには、基本的に製品を開発し、臨床試験を行い、特定の症状に的を絞った上で、その医療介入が本当に有効であることを実証する必要があります。

もちろん、Freespiraも複数の臨床研究を行って参りました。その他の処方を目的とした主たるデジタル治療も同様なプロセスを行ってきています。

したがって、私たちの治療は、本当に効果があり、臨床的な信憑性もかなり高いのです。

ハードウェアについては、すでに触れられましたが、ご存知のようにマウザーでは、OEMに販売サービスを行っています。ハードウェアエンジニアがデジタル治療の機器を設計する際は、どのような点に留意すべきでしょうか?

重要なのは、顧客のニーズを理解することです。 それが基本かと思います。

デジタル治療のソリューションにハードウェアのコンポーネントが使用されている限りは、

専門的な医療現場ではなく、ほぼ、家庭で使われることを前提とします。

よって、ハードウェアエンジニアは、家庭用にデザインを考え、FDAは、家庭用医療機器に関する有用なガイダンス文書を発行します。例えば、虫や生き物が開口部に入らないような設計しなくてはなりません。 専門的な医療現場ではなく、家庭で使うことを想定する方が、使い勝手の良さや人間工学的な特徴を考慮する必要があるでしょう。 もしカスタムメイドのハードウェアがあり、家庭用に設計することが想定されているならば、それに応じてアクションを行い、デザインを行い、ということです。

その他に、利用者へ一時的に貸し出す、というケースも想定できます。利用者は機器をずっと保管し、条件に合っている限りは使い続けます。弊社の場合ですと、1か月間の治療コースのみであるため、システムを構築し、患者へ送り届け特定の期間に保管して専門の指導のもと治療をうけてから、送り戻していただきます。

機器が返却されたら消毒をして、点検を行い、必要に応じてファームウェアとソフトウェアをアップデートしてから、次の患者さんにお渡しするための準備を行います。 このようなケースでは、機器が複数の患者を行き来する状態となるため、耐久性が一層、求められます。

この分野の市場全体の可能性はいかがでしょうか?

そうですね、一言で非常に大きな可能性があるといえます。

その要因をいくつか挙げたいと思います。 デジタル治療は、私たちが今話しているように、回線を使用しリモートで症状を診断できる、行動保健分野の治療に非常に適しています。

医師の診察室へ行く必要もなければ、診察のため医療道具で突かれることも、詮索される必要もありません。特にパンデミック後は、さまざまな症状で苦しんでいる多くの人々を救うために、行動保健治療の必要性が非常に高まっています。つまり、成長市場なのです。

潜在的に180億ドルの市場規模であると予測しています。

弊社では現在、パニック障害、パニック発作、PTSDを治療していますが、市場として現在利用できるソリューションがうまく出回っていないばかりか、医療従事者も不足していると感じています。

興味深い統計があります。アメリカ全土にある郡のうち、約60%はその郡内に精神科医が一人もいない状況だということです。 住んでいる地域の問題だとか、精神科医に診てもらうまでに3カ月から6カ月待つという問題でもなく、 そもそも精神科医がいないのです。

沿岸部では、医療機関の数が多いという点では恵まれていますが、それでも待ち時間は長く、保険が使えない医療機関も少なくありません。

人々が抱えている行動保健の問題へどうやって対処するかという大きな課題に直面しています。

個人的な意見では、デジタル治療は、医師やセラピストのオフィスに出向いて診療を受けに行く必要がなく、一般的には在宅で支援を受けられるため、医師と患者の双方にとってコミュニケーションを改善でき、有意義な進歩を起こす唯一の方法であると考えています。

残念なことに、精神疾患の治療を受けることは、まだ偏見があるため大きなメリットとなります。 私たちのヘルスプランをご利用いただいているお客様からも、どのようにすればメンタルヘルスソリューションをもっと利用しやすくなるか、さらに、医療従事者たちが圧倒的に不足していると伺っています。

そこで、私はデジタル治療が今後10年ほどの間に、大きな役割を果たすことになると考えております。

デジタル治療は何のためのソリューションでしょうか。

現在、私が知っているデジタル治療が行われている症状をいくつか挙げましょう。子供や大人のADHD、不眠症はもちろんパニック障害やPTSDの治療です。 PTSDに伴う悪夢を解消するための治療もあります。 他にも、アプライドVRと呼ばれる、より包括的なPTSD治療ソリューションもあります。患者は送られてきたVRヘッドセットで一連の治療を行います。 この後に、デジタル治療の標準的なバックエンド処理が実行されます。つまり、ヘッドセットから収集されたデータはすべてクラウドに送られ、患者がプロトコルを遵守しているか、症状が時間とともにどのように変化しているか、などの状況を見ることができます。DTAのウェブサイトをご覧いただければ、興味深いソリューションがたくさん見つかるでしょう。

VRヘッドセットとその使われ方について、もう少し詳しく教えてください。

確かに、PTSD症状の治療は、特に元軍人のための仮想現実ソリューションについては、これまでにかなり多くの研究が行われてきました。VRヘッドセットを活用しながら、練習やシミュレーションを行います。 患者にとっては、より体感的な経験をすることになります。そして、これらの仮想現実ソリューションは、成功例から派生した療法で、持続エクスポージャー療法と呼ばれています。この治療法は、通常、臨床医が診察室で行うものです。PTSD症状の引き金となった記憶に長期間さらされることで、患者は徐々にPTSD症状と折り合いをつけ、それを超えていくことを学び、フラッシュバックなどに引きずられなくなります。

ここ何年もかけて、セラピストと対面するのではなく、繰り返しになりますが、より多くの人に治療の機会を与えるためVR契約を結んで取り組んでいる企業がいます。Applied VR社は、独自のソリューションを開発した最新の企業のひとつです。 幸運なことに、Applied VR社は最近、メディケアメディケイドサービスセンター(CMS)から特定のHCPCSが付与されました。これで、治療費を直接請求できるようになりました。というのも、余談になりますが、デジタル治療業界が抱えている、もうひとつの大きな課題とは、どうやって治療費を回収するか、というものです。標準的な心理療法セッションや、ほとんどの医療介入には、請求コードがあるものですが、デジタル治療のためのメディケア請求コードは、まだ存在しないからです。

それにより、議会にとある法案が提出されました。上下両院一致で、処方箋向けのデジタル治療で請求を実施するためのものです。これはCMSにデジタル治療薬のカテゴリーを設けることを義務付けるのが目的です。おそらく半年以内に法案が成立し、デジタル治療薬の価格設定メカニズムを開始するかと想定しております。そうすれば、2つのことが可能になります。1つは、第三者支払機関がメディケアに追随して新しい治療法を採用し、それに対する支払いを行うこと、そして2つ目は、提供されるサービスの請求書を提出するために業界が利用できる請求コーディングの仕組みができることです。

法律が成立すること以外に、他に何か課題はありますか?

変化ですね。医療の世界では、変化のスピードが遅いです。

私はこれまで、画期的で、前例がないような装置をいくつか手がけてきましたが、それが普及するまで、やはり時間がかかりました。医療現場は、すぐには変わらりません。治療を通して、人々の人生に関与しているわけです。1つには、行われている治療法が本当に効果的であること、2つには、その治療を受けている特定の患者に本当に効果的であることを確認したいのです。つまり、一般的に医療従事者は、自ら行っている治療法に納得している必要があることを意味しています。そうでなければ、彼らは治療法を支持しません。医療従事者が治療法を支持しなければ、何も進まないのです。

現在、デジタル治療を行う際の選択肢として、医療従事者が患者に直接アプローチする方法があります。基本的には、私たちが医療教育を行い、そこからデータや情報を抽出し、患者に提示します。この治療法が裏付けられていることを相手に伝えられたら、安心していただけるでしょう。 この治療はすでに実証済みで、本当に効果があり、単なる有名人による売込みのセリフでもないと。しかし、結局のところ、薬を飲むのと同じように、携帯電話のアプリを使えば良くなるという考えに患者が馴染むには、時間が掛かります。ちょっと理解しがたいかもしれません。だから、受け入れられ、信じてもらえるようになるまで、試してみようと思うようになるまでは、時間がかかります。同じことが、医療従事者でも言えます。 だから、このような新しい治療法のパラダイムに対する認識や受容が必要なのです。それがもう1つの課題です。 それから、私はすでに、彼らが提供する治療に対して報酬を得られることについて話しました。

FreespiraCO2センサーは、そのソリューションにどのように適合するのでしょうか?

Freespiraのソリューションは、興味を持っていただけるでしょう。

私たちは、この活動を長いこと取り組んで参りました。当初は、このソリューションが、患者に販売されることになるだろうと思っていました。それで、私たちは、当時の市販のものよりも低価格のカスタムCO2センサーを開発することにしました。しかし、患者さんから「私は、パニック障害で苦しんでいます。」とお伺いしたときは、このままではうまくいかないことに気がつきました。 ご存知のように、その症状は、ほとんど身体的なものです。 そのため、治療を求める際は、行動面からのアプローチを受けるのではなく、医療システムの治療を受けることになります。医療機関にかかったり、緊急治療室に入ったりするのであれば、保険が適用されるだろう、という期待もありますから。

ほとんどが身体的な症状である疾患の治療において、信頼を得るには、保険が適用されなければなりません。保健が使えないと受け入れてもらえないでしょう。そこで保険会社の協力が必要であることわかり、東海岸、ペンシルバニア地域の大手であるHighmark Health2018年に民間非営利健康保険制度プランで最初の契約を結ぶことに至りました。そして、その保険会社の医療従事者のネットワークを通じて、多くの契約を結び、さらに中西部のメディケイドプランのいくつかを追加契約を獲得しました。最近では、マサチューセッツ州のTufts Harvard PilgrimプランであるPoint 32との提携を開始したばかりです。途中、ベテランズアドミニストレーションともお仕事を始めました。それで数百人の退役軍人を治療し、非常に良い結果を得ました。

しかし、当院の治療でキーポイントとなったのは、パニック障害やPTSDの症状に悩む患者さんの多くが、CO2過敏症という基礎疾患を抱えているということでした。時間が経つにつれて、不規則なパターンで呼吸する癖がつき、この呼吸状態に馴れてしまうのです。また、活動のレベルに対して空気を吸い込みすぎているケースも多いのです。このように、過剰呼吸のような呼吸をすると、呼気中の二酸化炭素は低下します。しかもまったく無意識にこの呼吸を行ってしまうのです。患者本人には、ご自身の呼吸パターンがどのようなものなのか、まったくわかりませんでした。 私たちのCO2センサーは、呼気中のCO2を測定します。これは、空気を取り込む量のを測る代用品のようなものです。より多くの空気を取り込めばCO2は減少し、その逆もまた然りです。私たちが提供するアプリがプリインストールされたタブレットによって、患者は自分の呼吸パターンを視覚化することができ、何が起こっているのかを知ることができるようになります。

Freespiraのコーチからトレーニングを受ける際は、弊社では患者に寄り添うコーチのネットワーがあります。コーチ陣はセラピーを行わず、Freespiraの治療がどういうものか、患者を指導します。シェルパのようなものです。彼らは患者の治療の道案内役を担います。速く呼吸してどうなるか、空気を多く取り入れたり、少なく取り入れたりゆっくり呼吸してどうなるか、といった患者にちょっとした練習をさせます。そうすることで、二酸化炭素(CO2)と呼吸数をリアルタイムで測定し、患者は呼吸パターンの効果をスクリーンで確認することができます。

イギリスで、弊社が実施したのと同様の呼吸法を、CO2の要素を除いて再現しようとした研究が実施されまさいたが、うまくいきませんでした。効果を示すことができませんでした。よって、適切な治療を行うためには、CO2測定が本当に必要なのです。 つまり、同じものを提供するカスタマイズされたハードウェアが必要となります。

サイモンさん、あなたとFreespiraがデジタル治療に参入した経緯を教えてください。

手始めにFreespiraの誕生秘話をお話ししたいと思います。とても素晴らしい話だと思っています。 ベスという女性がいました。 カリフォルニア北部にお住いで、何十年もパニック障害に苦しみ、かなり衰弱していました。ベスのことをよく知っています。彼女もよくこの話をされています。 彼女は薬物療法や、心理療法に基づく治療など、通常の治療をすべて試したが、何も効果が得られませんでした。ベスは、自宅近くのスタンフォード大学で、ある日、パニック発作を治療する新しいアプローチの臨床研究の広告を目にします。 このプロトコルは、その後Freespiraの治療に取り入れられています。 ベスは、その研究に登録し、研究に参加しました。それが彼女の人生を変えることになりました。 パニック発作がほとんどなくなったという点では、この研究は本当に大きな違いをもたらしました。

だから、ベスは、変わることが可能であることを心から信じているのです。 夫のラスは、ベンチャーキャピタリストとして、大きな成功を収めていました。ご存知のように、シリコンバレー周辺には、多くの人たちが暮らしています。この治療は、本当に優れているため、誰かが会社を立ち上げて、誰もがこの治療を受けられるようしてくれると期待に胸が膨らみました。ラスとベスは、誰かがそうしてくれることを期待しながら、様子を見ていましたが、誰も事業を立ち上げてくれませんでした。 シリコンバレーでは比較的簡単に企業することができるので、ベスは、自分で事業を立ち上げることにしました。 人材を探せば、契約医療機器開発者やソフトウェアエンジニアを見つけることができます。 想像力次第でなんでもできるようになるし、プロジェクトにも資金投入だってできます。ベスは、第一世代のシステムの開発に着手し、FDAから510Kを取得する必要があったため、 コンサルティング会社による規制当局への支援を求めました。

ベスは、MITを卒業し、工学の学位を持つとても賢い女性です。しかし、医療機器の会社を経営した経験はありませんでした。そこでラスとベスは、創設CEOを募集して採用し、会社を立ち上げ、準備を行って、この製品の市場が本当にあるかどうかを見極めることにしました。次に、市場戦略についても必要です。そこでベスたちは、創設CEOとしてデボラライゼンテルを雇うことにしました。彼女は2013年から創業者たちと一緒に仕事を始め今では10年になります。 デボラとは以前、別の会社で何度か一緒に仕事をしたことがありました。1つは胎児のモニタリングの事業で、もうひとつはデジタル治療の事業でした。 彼女が私に電話をかけてきて「ねえ、おもしろい話があるんだけど、協力してくれないかしら?」と言いました。

当時、私は家庭用腎臓透析装置で事業を展開する会社で働いていました。 その事業は成功をおさめ、現在ではOutsetと呼ばれています。 でも、自宅からの通勤があまりにも辛かったので、転職のオファーはいつでも受け入れるつもりでした。 私は、2013年に2人目の社員としてFreespiraに入社しました。魅力的な転職だと思った理由は、最初でも申し上げたように、私はずっと医療機器に携わってきており、技術的な観点からこの分野のエコシステムをよく理解していました。また、臨床研究、データ分析、新しい機器の市場投入の経験もありますが、それはすべて身体医学サイドのことです。 メンタルヘルスの仕事は、今回が初めての仕事となります。 だから、私がよく理解している医療機器、基本的にはCO2測定、つまり、ずっと前に扱っていたものを取り上げるのです。本当に興味深い機会でした。そして、他のいくつかの会社で働いた後、それをメンタルヘルスソリューションに応用することにしました。このソリューションがうまくいくとは、全く思っていませんでした。 しかし、研究結果が妥当であると照明してくれています。医療機器の患者モニタリング技術をまったく別の医療分野に活用することができる、興味深い機会だと思いました。 そのまま、現在の私の仕事になりました。

最後に、デジタル治療について何かご意見があればお聞かせください。

まさに今、医療機器産業が盛り上がりを見せているところです。マウザーのエンジニアを含め、皆さまは、どうすればこの業界に加わり、より多くの患者を救うことができるのか、どうすればこの業界を前進させることができるのか、いろいろ調べてみてほしいと考えております。

In Between the Tech」のこのエピソードを楽しんでいただけましたでしょうか?このポッドキャストは、マウザーによるデジタル治療と、それがテクノロジーと医療の両方に与える影響についての詳細な考察の一部です。 mouser.com/empowering-innovationで、ビデオや記事など、このテーマに関するEmpowering Innovation Togetherの全てをご覧ください。

サイモントーマスは、Freespiraの社長です。パワフルで新しい医療機器治療法を開発し、市場に送り出した実績を持つリーダーです。 サイモンはFreespiraの設立時に入社。以来、製品開発、臨床試験、品質管理、生物統計学、財務、オペレーション、そして2度の食品医薬品局(FDA)認可を含む薬事承認を主導してきました。 Freespira に入社する前は、成功した数多くの医療技術企業でエンジニアリング、研究開発、QA/RA、オペレーションを指揮しました。