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環境センサのユースケース:室内空気質モニタリング

室内空気質のモニタリング

Ronan Cooney(マウザー・エレクトロニクス)

この十年間にセンサ技術は進歩を続け、いくつもの新しいアプリケーションとユースケースを実現しています。そのひとつが、室内空気質に重点を置いた環境センシングと空気質モニタリングです。特に新型コロナが世界的に流行し始めた頃から、室内の空気の質に対する関心が高まり、敏感に意識されるようになりました。

室内空気質のモニタリングでは、二酸化炭素(CO2)、粒子状物質(PM)、揮発性有機化合物(VOC)の濃度など、いくつかの要素を監視する必要があります。センシング技術は進歩していますが、追跡すべき可変要素は非常に多いため、室内空気質のモニタリングは容易ではありません。とりわけハードウェアのシステム設計は困難で、設計者は性能、精度、消費電力のトレードオフを迫られます。

このブログでは、室内空気質モニタリングシステムに使用される様々なセンサに注目し、システム設計の課題と問題へのソリューションを解説します。

室内空気質モニタリング用のセンサ


室内空気質のモニタリングにおいて、まず監視すべき3大汚染物質はCO2、PM、VOCです。一般にこれらの汚染物質を測定するには特殊なセンサが必要です。
CO2の検出には、非分散型赤外線(NDIR)センサ、電気化学センサ、金属酸化膜半導体(MOS)センサなどが使用されます。例えば、Amphenol Advanced SensorsのT6793は、室内空気質のモニタリングで超高精度の検出を行うために設計された、NDIR CO2センサです。このセンサは、測定範囲440ppm~2,000ppm、精度定格:測定値±45ppm +3%という素晴らしい仕様を備えています。

一方、PMは形状も発生源も多様であることから、最も検出が難しい汚染物質のひとつです。一般にPMは、粗粒子状物質(PM10)、微粒子状物質(PM2.5)、および超微粒子状物質(PM0.1 粒径0.1µm以下)の3種類に分類されます。こうした違いに対応するため、PMセンサには光散乱式粒子計数や体積散乱式など、さまざまな検出技術が搭載されています。

同様に、VOCもさまざまな種類があるため、複数の検知方法が必要になります。VOCセンサの人気トップ3は、 光イオン化検出器、水素炎イオン化検出器、MOSセンサです。一般にこれらのセンサの校正にはイソブチレンガスが使用されますが、実際に測定する揮発性有機化合物によって、その反応と出力測定値はさまざまです。

こうした3大染物質だけでなく、気温や湿度なども有害物質の発生を促す重要な要素であるため、監視する価値があります。

環境センシングの課題とトレードオフ


センシング技術にはさまざまなオプションがあるため、アプリケーションと環境に適したセンサを判断するのは、室内空気質モニタリングの設計において最も難しいことの1つです。一般に設計者がセンサを選択する際に重視する主な検討事項は、消費電力と性能の2つです。

大半の室内空気質モニタリングシステムは、空気質を監視する専用のセンサと無線システムを備え、データを中央のオンラインハブに無線伝送してデータ分析を行います。こうしたセンサは、最適な柔軟性と価値を提供するために、一般にバッテリ式を採用しています。そのため、バッテリの寿命が重要で、室内空気質監視システムを設計する際には、消費電力と性能のバランスに苦慮することになります。

一般に、環境センサは消費電力が高い方が高性能です。例えば、サンプリング速度を上げれば、センサは詳細なデータを取得できますが、そうすると消費電力が大幅に増えます。その結果、バッテリの消耗が早まり、装置のダウンタイムやメンテナンスが発生します。

反対に、消費電力を最小限に抑えると、検知性能はもちろん、無線通信の信頼性も低下します。室内空気質モニタリングシステムの消費電力が低ければ、センサの精度は著しく低下します。

したがって、室内空気質モニタリングシステムの理想的な設計とは、適度なバッテリ寿命を持ちなたら、正確で価値のある有用なデータが得られるように、性能と消費電力のバランスを見つけることです。多くの場合、低消費電力コンポーネントを慎重に選び、デバイスのスリープモードを賢く利用し、アプリケーションと配置場所に応じて適切な無線通信プロトコルを選ぶことで、これを実現することができます。

まとめ


健康的できれいな空気を吸える環境で暮らしたいのであれば、室内空気質を正確に監視できなければなりません。空気質について価値ある洞察を得るためには、高品質で正確なデータが必要です。ここに挙げたようなセンサを使用して、性能と消費電力のトレードオフのバランスを取る適切な設計を行うことで、将来、より健康的な生活環境と職場環境を築くことができます。