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エネルギー貯蔵システムで太陽エネルギーをバッテリに蓄積

太陽光発電と蓄電池を統合するシステムの最適化

Adam Kimmel(マウザー・エレクトロニクス)

画像提供:KanawatTH/Stock.Adobe.com

太陽光発電がブームとなり、年々発電量を伸ばしています。しかし、どうやってエネルギー源からエネルギーを取り出し、エネルギー貯蔵システム(ESS)に貯蔵し、負荷側に送電するのでしょうか?このプロセス(パワーデリバリー)は、概念自体はシンプルですが、いざ実装となると複雑です。特に太陽光はエネルギー量と継続性が(大抵前触れなく)変化し、システムの出力レベルが変化するのでやっかいです。

実用的な太陽エネルギーは貴重です。そのエネルギーをただ蓄電池に蓄えて、インバータ経由で負荷側に送電するだけではもったいない。まず、エネルギーの収集効率を最大化し、高品質のコントローラでエネルギー貯蔵サブシステムに伝送しなければなりません。この記事では電源供給について概説し、人気のエネルギー貯蔵システムの方式について考えます。

 

エネルギー貯蔵システム


エネルギー貯蔵システム(ESS)には主に3つの構成要素があります(図1)。

  • エネルギー源とエネルギー貯蔵ユニット(多くはバッテリエネルギー貯蔵システム(BESS)、ただし他の方式もあり)間の経路
  • エネルギー貯蔵ユニットとその管理
  • 貯蔵ユニットと負荷(すなわち、エンドユーザまたはグリッド)間のDC/ACインバータ

 
図1:バッテリはさまざまなエネルギー源からエネルギーを受け取って蓄積し、それを電力としてDC/ACインバータ経由で負荷側へ送る。(画像:マウザー・エレクトロニクス)

ESSはエネルギー源からのエネルギーを蓄積し、それを電力としてオンデマンドで負荷側に伝送します。ただし、太陽光発電では間欠的にしかエネルギーが得られません。この特徴は、住宅やビジネスなどの用途に必要不可欠な電力レジリエンスに大きな課題を突き付けています。エネルギー貯蔵は、再生可能エネルギー源の間欠性を軽減する重要な媒介として登場しました。

電気自動車(EV)により先進化学の需要が急増した影響で、バッテリは最大のエネルギー貯蔵ソリューションとなっています。エネルギー源と負荷の間に位置するエネルギー貯蔵バッテリと管理システムは、収集したエネルギー量を仲介し、電力需要を満たす必要があります。

 

容量駆動型のアーキテクチャ


エネルギー源とアプリケーション負荷の組み合わせはほぼ無限です。よって、最適な性能を実現するアーキテクチャも一つではありません。さらに太陽光を利用する光起電(PV)装置は、出力規模に応じて広範囲にわたり細分化されています。

太陽光の場合、一つの汎用市場区分が3つの分野に分かれています。

  • 住宅用:プライベート空間向け、10kWまで
  • 商用:オフィス、工場向け、5MWまで
  • 公共規模:野外設置向け、5MW以上

 

太陽エネルギーを規模拡大する際の検討事項


ソーラーパネルは複数の太陽電池で構成され、各電池は1桁台の出力電圧を生成しています。システム設計者は、アーキテクチャの効率を最大限高めて必要な電力を供給するため、パネルを直列接続します。その結果、太陽光発電システムの規模によって、特定のアプリケーション電力の精度向上が可能になります。

以下のセクションでは、消費者に馴染みの深い住宅や小規模商用設備用のPV型バッテリエネルギー貯蔵システム(BESS)に注目します。

 

太陽エネルギーをバッテリに充電するしくみ


バッテリにエネルギーを貯蔵すると、エネルギーを単独で使用したり、グリッドに接続してバックアップ電源またはピーク時の補助電源として使用したりできるという利便性が得られます(図2)。

 
図2:必要に応じて局部負荷とグリッドに電力を供給する、太陽光発電エネルギー貯蔵システムに必要な重要機能のブロック図。(出典:Infineon Technologies)

太陽電池パネルとバッテリ間の電子インターフェイスは、降圧、昇圧、昇降圧DC/DCコンバータです。コンバータの種類は、PV出力の最大相対電圧とバッテリアレイの最大電圧を比較して選択します。

ただし、ソーラーパネルから最適な電力供給を行うには、Phoenix Contact AXC F 2152 PLCnextコントローラのような充電コントローラが必要です。充電コントローラは、ソース電力と負荷が一致する最大電力点(MPP)を追従しながら、PVセル出力から最大限の電力をDC/DCコンバータに伝送し、さらに蓄電池に伝送します。AXC F 2152コントローラは過酷な環境でも最大限の性能を発揮するため、太陽光アプリケーションに最適です。

ソーラーセルが生成する電流は太陽光の受光量に比例する一方、開回路電圧は比較的一定です。図3の電力曲線が示すように、出力は、セルが定電圧から定電流へ遷移する各曲線の折れ点で最大となります。

 

図3:セルが定電圧から定電流に切り替わるとき、ソーラーパネルの出力は最大になる。(出典:Analog Devices)

MPPは、PVパネル/太陽源エネルギーの特性値と周囲温度の関数です。最も効率的な充電器は、太陽光のレベルが充電器の最大出力要件を満たさないとき、ソーラーパネルの出力電圧を最大出力点に揃えます。この機能は変換ステップからより多くの電力を抽出し、エネルギー効率を高めます。

よって、PVパネルから最大出力を引き出すには、MPPとパネル負荷をモニタリングしながらコンバータを制御し、出力を動的に最適化する必要があります(図4)。この操作を最大電力点追従制御(MPPT)といいます。

 

図4:パネルはパネル出力に応じて負荷を予想するため、基本MPP管理(ここでは鉛蓄電池)にはDC/DCコンバータを調節する必要がある。(出典:ResearchGate)

MPPTでは、充電コントローラの戦略またはアルゴリズムによってMPPを決定してから、それを追跡する必要があります。最大電力を追跡する方法は、パネル定電圧と摂動観察の2通りあります。

パネル定電圧
一番簡単な追跡方法は、ソーラーセルのデータシートに記載されている電池の開回路電圧(VOC)に基づいて定電圧を決定し、パネル電圧をその値に設定することです。ソーラーパネルの最大出力(VMP)時の電圧は、VOCをやや下回る固定電圧値で推定します。これを簡単に行うには、VMP=VOC時の温度係数と予期される温度範囲にわたる直線を考慮します。これらの近似値によって、簡易温度補正された抵抗器をVMP時のパネル電圧に設定することができます。

摂動観察(P&O)
パネル定電圧法にはひとつ欠点があります。それは変化する雲の密度やPV部品の通常損耗など、条件の変化に応じて最大限の効率を維持できないことです。

条件に適応してMPPTを行うには、より先進的な「摂動観察(perturb and observe)」 (P&O)という方法があります。P&O MPPTは、電力変化対電圧変化(ΔP/ΔV)の傾斜を評価します。この線はMPPの左側が上昇、MPPの右側が下降、極大点がゼロ、つまり最適電圧を示します。動的MPPTアルゴリズムは、意図的にパネル負荷を公称値付近で若干「摂動」させて、出力の変化(向上するか、低下するか)を観察することで、MPPの変化をマッピングします。

照射、埃、温度といった変化する環境条件にかかわらず、セルから得た電力を出力に変換するという点において、コントローラの組み込みアルゴリズムは最大限の効率を引き出します。コントローラは起動モードを終了するとMPPTモードに入り、最大電力点を探し始めます。図5は、パルス幅変調(PWM)信号デューティサイクルが変化して、曲線の傾斜ゼロポイントを見つける様子を示しています。

 

図5:MPPTではPVパネルの公称動作点付近の電圧特性変化に対する出力変化の傾斜を評価する。(出典:SN Applied Sciences)

 

電力を取り出す


エネルギーをバッテリへ移動しても、バッテリエネルギー貯蔵システムはまだ道半ばです。目標は蓄積された電力をバッテリから負荷側、一般には、ラインオペレート型の装置とシステムに給電できる、通常120/240VACラインに送ることです。

出力機能には、バッテリのDC出力を取り出してライン互換ACに変換する、DC/ACインバータが必要です。エネルギー源とバッテリ間の電子機器にも言えることですが、このインバータも「ワンサイズですべてに対応できる」わけではありません。インバータのトポロジーと設計だけでなく、さまざまな設計上の課題とトレードオフを考慮する必要があります。正式な定義はありませんが、業界の専門家はしばしばインバータを出力と特性別に「低、中、高」の3つのカテゴリに分類しています。

マイクロインバータ(低出力)
低出力マイクロインバータは、定格電力50W~400Wで、各ソーラーパネルに個別のインバータとMPPトラッカーを統合し、ストリングインバータよりも高効率を実現します。DCケーブル配線はごくわずかですが、広範なACケーブル配線が必要です。そのため、経済的にフィットするのは、小規模システムに限られます。

ストリングインバータ(中出力)
ストリングインバータは1kW~20kWの中出力インバータです。この方式では、ソーラーパネルは直列接続された複数のインバータ(ストリング)と接続します(大抵の場合、1ストリングにつき1つ)。各ストリングが最大電力点で動作できるため、高効率を実現できます。

セントラルインバータ(高出力)
セントラルインバータは20kW以上の高出力インバータです。このカテゴリでは、一組のソーラーパネルにインバータを1つだけ使用し、ストリングを並列接続します。ストリングの電圧はそれぞれ異なるため、特殊ダイオードを追加してパネルの最大出力を引き出します。ただし、ダイオードは損失がつきもので、効率低下が生じます。そのため、セントラルインバータでは、すべてのソーラーパネルが最大電力点に到達できない可能性があります。

 

まとめ


再生可能エネルギーは、間欠的電源とパワーデリバリーのアーキテクチャといった分野で、電力制御に新たなチャンスをもたらします。通常のコントローラを用いてソーラーパネルをバッテリに接続し、バッテリを電源として使用する方法も、場合によっては機能するかもしれませんが、性能上の欠点、安全上の問題、効率の問題がついて回るでしょう。

それよりも、エネルギー源~蓄電池~バッテリ管理の経路に適したコントローラとDC/DCトポロジーを選んだ方が良い結果が得られます。エンジニアは厳選したDC/ACインバータを最適化して、性能効率、一貫性、寿命、レジリエンスを確保する必要があるでしょう。