Skip to main content

室内空気質を改善するセンサ

室内空気質の改善:センサノードが健康および生産性のモニタリングと向上に果たす役割

Alex Pluemer(マウザー・エレクトロニクス)

気候変動により地球の温暖化が進み、高温乾燥による山火事が多発するなか、世界中の天気予報で空気質指数(AQI)という言葉を頻繁に耳にするようになりました。AQIは空気中の特定の物質(灰や自動車の排気ガスなど)や汚染物質の量を示すもので、これらの汚染物質の濃度が人体に危険なレベルに達すると、人々に注意を喚起します。一般にAQIは屋外の空気の質を表すために使用されますが、屋内の空気の質はどうでしょう。

屋外では、機械を使わなくても(空気中の煙や強い悪臭などで)空気が悪いことに気づくことがよくありますが、屋内で劣悪な空気質を検知するのは容易ではありません。もしあなたが一日の大半を自宅や学校、オフィスビルで過ごすとしたら、おそらく外気よりも室内の空気質の方が健康への影響は大きいでしょう。

汚染された外気が室内空気質に影響することもありますが、屋内の代表的な汚染物質には、空気質モニタリング技術によってのみ検知・数値化できるものがあります。一酸化炭素(CO)、副流煙、空気中のカビや細菌などもそうした屋内で検知される汚染物質で、繰り返し暴露されることで深刻な健康被害につながる可能性があります。従業員や生徒の安全衛生の一義的な責任は企業や学校にあります。室内空気質のモニタリングは、安全で健康的な屋内環境の維持に欠かせない要素です。さらにそれが生産性や職場の士気向上につながる可能性もあります。

SensirionのSEN5xのようなセンサノードは、室内空気質を監視し、空気中の汚染物質をリアルタイムで測定することで、既存の暖房・換気・空調(HVAC)と空気清浄システムを強化し、大規模な再構成を必要とせずに正確で信頼性の高い測定値の提供を実現します。この記事では、最も一般的な屋内の汚染物質を取り上げ、SEN5xのようなデバイスがどのようにエンドユーザの施設の安全性と生産性維持を支援するかについて検討します。

空気質を測定する


前述したように、空気中の汚染物質として最も一般的なのは微粒子状物質です。これはしばしば燃焼により発生する顕微鏡レベルの微細な固体物ですが、私たちはこれを気づかぬうちに吸い込んでいます。こうした粒子状物質が大気中に多く浮遊している場合、窓を閉めて外出は控えるか、どうしても外出するときは防塵マスクをつけるように注意喚起されます。多くの家庭、学校、オフィスビルには、空気中の粒子状物質をふるい分けて排出する空気ろ過システムが設置されています。それでもクリーンルーム以外では、少量の微粒子は常に存在します。 

多くの場合、室内空気質はガスのような空気中の汚染物質によって悪化し、適切に監視しなければ、深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。空気中の一酸化炭素濃度が高いと、重い病気や意識障害、あるいは死に至ることさえあります。一酸化炭素関連の重症・死亡事故は、概して、化石燃料を燃やす暖房器具などの機器の使用が関係して発生します。不完全燃焼により発生する一酸化炭素ガスは無色透明かつ無臭で、適切に換気しなければ建物内に充満します。  

空気中の二酸化炭素(CO2)レベルも監視しなければなりません。CO2暴露の悪影響は、通常、一酸化炭素(CO)ほど深刻ではありませんが、長期的な問題をもたらす可能性があります。CO2濃度が高い環境にいると、いつもより眠気を感じ、頭痛や吐き気を覚えることもあります。現在、アメリカでは38の州とコロンビア特別区で、CO/CO2検知器をすべての住宅に設置することを規制や法律で義務付けていますが、そのうち学校に義務化している州は5つしかありません。通常、一酸化中毒は狭い閉鎖空間で発生するため、COモニタは大型のオフィスビルや製造施設には義務付けられていないことが多いのです。CO2濃度の測定は、施設管理者にとってHVACシステムの性能評価に役立つため、効果的にCO2を検知し、監視すれば、室内空気質に大きな影響を与えることができます。

カビと胞子も空気中の汚染物質です。一般に高温湿度によって発生しますが、その検知は必ずしも容易ではありません。住宅や施設で湿度と結露を管理すれば、手が届きにくい狭い場所でカビが成長するのを防ぐことができます。湿気過多は人に有害な特定の空気中の細菌を増殖させるおそれがあるので、そうした点でも屋内の湿度は注意深く監視する必要があります。

揮発性有機化合物(VOC)は、人が生活したり働いたりする場所であれば、ほとんどどこにでも外気中に存在しますが、通常、屋内で高濃度になります。揮発性有機化合物は化学物質や液体・固体物から放出されるガスです。洗剤や塗料、OA機器、家具の素材など、様々な物から放出されます。VOC暴露のリスクを下げるには、一般に有害物質を適切に保管し、全体の通気性と換気を改善します。ただし、特定の揮発性有機化合物(ホルムアルデヒドなど)はたとえ低濃度でも健康によくありません。

ラドンやアスベストのような発がん性物質は、それらを含む建材を使用した建物で検出されることがありますが、こうした建材は現在、安全上の理由から広く禁止されています。こうした物質への長期的暴露による健康被害は、一酸化炭素ほど急激でないかもしれませんが、同じように深刻で、死に至ることさえあります。ラドンとアスベストへの暴露は、肺がんの発症率を高めることが確認されています。

空気質モニタリング技術


ひとつですべてに対応できる空気質モニタはありません。市場にはさまざまなフォームファクター、特長、機能性を備えた製品が出回っています。設置場所と環境に応じて、小型の空気質モニタを有効活用できる場合もありますが、いつの間にか機能性を犠牲にしているかもしれません。また、空気質センサはごく一部の汚染物質しか検知できないため、すべてを検知するには複数のセンサを組み合わせる必要があります。

SensirionのSEN5x環境センサノードは、空気中の粒子状物質、揮発性有機化合物、窒素酸化物、相対温湿度を監視できます。レーザーを照射し、空気中の粒子状物質が反射する光をフォトダイオードで受光することで、粒子状物質を計測します。フォトダイオードに届く反射光が多いほど、粒子状物質は多くなります。この方法は、一定の大きさの粒子しか測定できないフィルタ振動法よりも遥かに正確な測定値を提供します。しかも光検出法では通常、サンプリングサイクルの開始から正確な測定値が出るまで数秒です。

SEN5xは、53mm×44mm×22mmの小さなフォームファクターで、空気中の汚染物質を1秒以下の間隔でサンプリングすることで、継続的にリアルタイムの空気質をモニタリングします。完全なセンサノードとして筐体内に複数のセンサを搭載し、粉塵への耐性を高めるシースフローテクノロジーを採用することで、工場や生産施設などの過酷な屋内環境における正常機能を確保しています。さらに最適な機能性の維持と長寿命化を促す、気流ジオメトリ・テスト済みのファンも搭載し、10年超の耐用期間も見込めます。センサが測定モード中にファンはオートクリーニング機能を実行し、回収した粉塵を排出します。汚染のひどい場所でセンサノードを使用する場合は、クリーニングの間隔を調整することもできます。

またSEN5xノードにはI²Cインターフェイスも搭載されているので、既存のHVAC、空気清浄機、空気質モニタリングシステムへの組み込みが容易で、コストと時間のかかる再構成を回避できます。また、温湿度補償とVOC指数計算用の独自のアルゴリズムが事前に統合されているため、既存システムへのシームレスな統合をさらに促し、開発者がコードを書く各手間も省けます。これらのアルゴリズムにはSensirion Temperature Acceleration Routine(STAR)エンジンが含まれ、Sensirion社によれば、競合製品よりも最大3倍の速さと信頼性の高い温度測定値を提供します。また、設置時にデジタル出力を絶対校正し、最大50msでリセット可能なので、空気質モニタに関連する校正と起動の時間が短縮されます。

SEN5xノードは通常、0.7mA~70mAの電流しか消費せず、最大でも100mAであるため、既存の電気設定の再配線や再構成の手間を省くことができます。平均音響放射レベルもわずか24dBで、どんなに静かな職場でも邪魔にならないでしょう。

空気質、健康、生産性


現在、全国的、世界的に認知されている健康的な空気質の基準は存在しませんが、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)といった機関によって、最も一般的な大気汚染物質に対する安全暴露レベルの推奨ガイドラインは策定されています。COやCO2のような空気中の化学汚染物質は、100万分の1(ppm)単位で測定されます。屋内環境におけるCO2の正常範囲は400ppm~650ppmで、800ppm以上になると悪影響が出始めます。空気中の高濃度のCO2は、健康に悪いだけでなく、職場の生産性にも深刻な問題を引き起こします。

息苦しいほど人が多い部屋に入ると、まぶたが重くなり、他の人の声がノイズのように遠のき、思わず眠りに落ちる、こんな経験をした人は多いことでしょう。会議が退屈だったのかもしれませんが、もしかしたら、それは二酸化炭素の過剰暴露が原因だったのかもしれません。空気中のCO2レベルが職場の生産性と士気に直接的に影響することは、研究によって明らかになっています。つまり、換気を良くすれば、従業員は幸福度が上がり、より勤勉に働くようになるというわけです。カジノではこの論理に従って、客が疲れすぎないようにCO2の濃度を監視し、客を元気づけるため、建物内に酸素を送り込んでいます。 

大気汚染物質の中には、安全許容量がごく微量のもの(例えば、ホルムアルデヒドの推奨暴露レベルは0.2ppm以下)、どんなに微量でも危険なもの(ラドンやアスベスト繊維)があります。空気中の粒子状物質はマイクログラム毎立方メートル(µg/m3)単位で測定されます。EPAは、PM2.5(直径2.5マイクロメートル以下の粒子状物質)を12µg/m3以下に、PM10(直径が10マイクロメーターより大きい粒子状物質)を54µg/m3以下にすることを推奨しています。人間の肺は大きい粒子の方が適切にろ過して排出できるためです。

HVACシステムを最適なレベルに維持することも、新型コロナのような空気感染性疾患の感染防止に有効です。感染を防止できれば、企業は病欠と生産性低下による時間と費用を節約できます。空気感染性の病原体を検知できる空気質モニタは、あまり市場に出回っていませんが、CO2などの空気中の汚染物質のモニタリングは、全体的な空気の流れと通気性の改善、感染リスクの低下に役立ちます。

まとめ


安全で健康的な職場や学習環境を育むためには、健康的な空気質の維持が不可欠です。強力なHVACおよび空気浄化システムには、システムがどのように機能しているか、どうすれば状態を改善できるかを施設管理者に知らせるセンサが必要です。Sensirion SEN5xのようなセンサノードは、リアルタイムで非常に高精度の情報を提供し、環境を調整する必要がある場合は、それに必要なデータも提供してくれるうえ、既存のシステムにも簡単に統合できます。自宅、学校、オフィス、生産施設では、空気質のモニタリングが心身の健康に欠かせません。タイムリーに信頼性の高い測定値を得るには、SEN5xのような空気質センサノードが不可欠です。