5G設計におけるパワーアンプモジュールとその役割
パワーアンプとは?
RF信号を扱う場合、特に5Gの高周波帯域では、電圧レベルが極めて低くなることがあります。これは、低振幅時にシステムレベルのノイズに対する電磁(EM)信号の感受性が高くなってしまう(つまりSN比が下がる)からで、対策が必要です。しかも低電圧信号には、下流の電気回路やアンテナを駆動できるだけのパワーもありません。
こうした課題に取り組むために、エンジニアはパワーアンプ(PA)を活用します。RF PAは、RF信号の振幅や出力、駆動能力を上げる回路ブロックです。通常、RF PAはシステムアンテナの近くに置かれ、送信アンテナに高出力信号を提供します。
PAの目的は、入力から出力への高度な忠実性を維持しながら、信号をブーストすることです。こうしたことから、PAの仕様においては直線性、効率性、出力が重要になってきます。
パワーアンプ設計における課題
パワーアンプ(PA)と周辺回路は従来、基板上に個別部品を配置して設計されてきました。このアプローチは長年にわたり業界を支えてきましたが、設計上の重要課題がいくつか浮上するに至り、その有効性に疑問符が付きつつあります。
課題の1つは、面積、コスト、性能、消費電力のバランスをいかに取るかです。一般に、これらの仕様は互いに対立しがちであり、設計者はいかにして回路を最適化し、所定の用途に最適な方法でバランスを取るべきかを把握しておかなければなりません。個別部品を使用する場合、バランスを取るのはますます難しくなります。部品の選択、部品の相互運用性、配置などが性能を左右するからです。
5Gに移行すれば、事態はさらに複雑化します。5Gでは、より幅広い帯域幅と、より高い周波数帯域に対応しなければならないためです。今日のシステムは、最大400MHzの平均瞬時帯域幅と、最大4GHzの周波数での運用が求められます。 つまり今や設計者の課題は、この周波数帯域での性能を保証しながら、同時に上述のような仕様のバランスを取ることになっているわけです。
パワーアンプモジュールで課題を解決
これらの課題の解決に向け、Qorvoはパワーアンプモジュール(PAM)に着目しました。
PAMは、PAの個別部品と周辺回路を1つのパッケージソリューションとして統合した電子部品です。たとえば5G基地局という用途には、ドライブアンプと終段アンプを1つのパッケージに統合したPAMを用いることができます。それぞれを個別回路ブロックとして実装する必要はありません。このようにPAシステム全体を1つのモジュールに統合すれば、多くの重要な成果を上げることができます(図1)。
図1:Qorvo QPA4501 PAMはドハティ終段アンプを統合し、高出力と効率性を実現します。(出典:Qorvo)
第一に、PAMは基地局などのRFシステムの設計を、個別部品を使った場合と比べて著しく合理化します。部品を選んで個別の回路を設計するのではなく、ニーズに合ったモジュールを選び、システム全体に実装するだけで済みます。
さらにPAMは、個別部品を使った場合と比較して、より高い性能を実現し、面積の問題を解決します。部品を統合するため、寄生素子の発生など配置に関する心配がなくなり、結果として性能と効率性の向上を図れます。さらにQorvo PAMはインピーダンス整合なども考慮しているので、最大限の性能を上げることが可能です。
最後に、部品の統合によってシステムの小型化を図れるため、最終的なシステム設計において重量と面積を減らすことができます。
Qorvoが誇るパワーアンプモジュールの専門知識
Qorvoは、業界で最も広範で革新的なGaN-on-SiCポートフォリオを提供し、ユーザーの皆様が卓越した効率性と運用帯域幅を実現できるようお手伝いしています。GaN-on-SiC製品群は、高出力密度、小型化、優れたゲイン、高信頼性、プロセスの成熟を兼ね備えています。Qorvoは、未来の5Gシステム設計におけるPAMの重要性を踏まえ、業界をリードするソリューションの開発に常に務めています。Qorvoは、パワー、効率性、サイズ、コストのバランスに優れ、可能な限り容易な設計を実現するPAMを、ユーザーの皆様にお届けします。