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深度センサによる体積の視覚化

Jon Gabay(マウザー・エレクトロニクス)

 

はじめに


ロボットとマシンビジョンデバイスは、さまざまなフィードバック機構を使用して精度を確保しています。3D空間をある程度高精度で識別する方法はいくつかあり、 これまでは、光、超音波、マシンビジョンセンシングといった技術で十分な成果を得てきました。しかし、要求が厳しくなるにつれ、さらに高い精度が求められています。次世代のビジョンベースの設計は、奥行き(深度)と体積の検出精度の向上に重点が置かれています。

 

技術的背景


これまでの技術は、目の前の問題をそれなりに解決してきました。最も安価な機械式深度センサや表面センサは、バネ式リニアトリムポットやリミットスイッチのようなごくシンプルなものです。

精度では、可動部品が不要な超音波や光学技術のほうが優れていいることが証明されています。光学的距離検出は、単純な近接検出や、より高い精度が求められる距離測定に使用されています。この方法では、1ミリメートルから8メートルまでの近接距離をGo/No-Goデジタル信号で識別し、対象物の有無を示すことができます。

そして高解像度の最新型カメラが低価格で手に入るようになった今、測距および体積測定の最前線にあるのがビデオ技術です。次世代のデザインと要件が生まれ、デバイスメーカーは高性能ソリューションの提供を迫られています。

 

より多くの選択肢へのニーズ


機械の精度向上を必要とする一方で、コロナ後の世界では特定の場所で人を感知し、人数を検出するニーズが生まれています。ソーシャルディスタンスは比較的新しい要件ですが、多くの場所で導入が求められています。認知症患者のケアにも、これに似た要件があります。介護施設では、徘徊する患者の位置を追跡する包括的なコンピューターシステムが欠かせません。

産業用途や工場でも、より堅牢で精密な測距・体積測定サブシステムが有用になるでしょう。先進的な製造技術が進歩と統合を遂げるなか、次世代の製造機械には精度、位置、方向、速度、奥行きのフィードバックが不可欠です。たとえば、フライス盤は高精度のモーターとギアアセンブリがなければ、切削ヘッドと砥石台を正しく配置することができません。深すぎると切削ヘッドが割れ、 浅すぎると、工作物が十分切削されません。こうした装置は、たとえキャリブレーションがオフになっていても、正確な距離を検知して正しい位置を把握します。閉ループのフィードバック制御のおかげで、適切な加工ができるのです。CNCマシン、3Dプリンタ、レーザー/プラズマ切削・溶接機でも高精度の閉ループフィードバック制御が有効に機能しています。

 

最新のイノベーション


Analog Devicesは、さまざまなアプリケーションで体積検出・測定のニーズが高まることを予想していました。AD-FXTOF1-EBZは、Time of Flight(ToF)測距機能を組み込んだ専用のビデオエンジンモジュールです(図1

図1:体積測定から占有・活動検出まで、さまざまな用途に対応するモジュール式3Dセンシング開発キット。(出典:Analog Devices)

 

VGA解像度640x480、30fpsなので、周辺機能としてホストアプリケーション・スーパーバイザに容易に統合できます。2レーンMIPI(Mobile Industry Processor Interface)を搭載し、MIPIとインターポーザボードを25ピンまたは15ピンのフレックスケーブルで接続できます。

940nm赤外線レーザーは目に安全な垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)で、直角エミッタがないため、製造コストが抑えられます。また、光学940nmバンドパスフィルタなどによって、高照度条件下でも動作が可能である点も大きな強みです。これにより、外部からのノイズや干渉を遮断できます。バットウィング型ディフューザを使用して、精度の高い視野角87度×67度の受光レンズを提供します。

性能面では、ビデオ奥行きファインダに2つの作動範囲を設定でき、 範囲20cm~180cmと範囲50cm~300cmで精度幅2%を維持します。-20ºC~+75ºCでの必要定格出力は5V、2Aで、環境に対する一定の耐久性と堅牢性を備えています。

SDK開発キットスタイルインターフェイスでは、ホストマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはRaspberry PiやNvideaのようなシングルボードコンピュータに接続可能です(2)。またSDKは、OpenCV、Open C/C++、Python®、MATLAB®、Open3D、RoSラッパーも提供し、アプリケーション開発の簡素化を実現します。接続オプションにはUSB、イーサネット、Wi-Fiがあり、リファレンスデザインと部品表が用意されています。

 

図2:実際のカメラとレンズRFPCボード、および画像処理AFEボードは、制御と構成用にIICインターフェイスを使用。GPIOおよびMIPIインターフェイスにより、リアルタイムでの制御とデータアクセスが可能です。(出典:Analog Devices)

 

まとめ


高速で鮮明な画像・距離検出のニーズの高まりを受け、次世代のセンサ、ロボット、自動車、安全システムが設計されています。Analog DevicesのAD-FXTOF1-EBZを使えば、迅速かつ簡単にテストが行えます。今後、この技術は家庭用や産業用のさまざまなアプリケーションで採用されるため、さらなる高解像度、高速フレームレート、長距離対応の実現が期待されます。