スマートシティの交通管理とIoT
交通渋滞は大都市にとって悩ましい問題です。コネクテッドカー関連サービスとモビリティ分析の世界最大手、INRIXによると、コロナ以前、アメリカ人ドライバーは年間平均100時間近くを交通渋滞で失ったといいます。さらにINRIXの世界交通渋滞調査では、コロナ以前、ドライバーが交通渋滞で失った時間は最大で191時間にのぼると報告されています。通勤者が徐々に戻る中、道路もパンデミックの眠りから覚めようとしています。人口過密化が進み、SDGs達成の要求が高まる中、都市は総合的な交通戦略の一環として交通管理を再検討しています。
幸いなことに、モノのインターネット(IoT)などのテクノロジーで、このプロセスを迅速に進めることができます。センサを組み込んだIoT機器は、車、橋、道路、交通、街灯からデータを収集し、中央アグリゲーションプラットフォームに伝達できます。そしてプラットフォームはこのデータを用いて短期的、長期的に渋滞を緩和することができます。
IoTを活かした交通管理
車両間通信(V2C)および車両-インフラ通信(V2I)は、交通渋滞が発生したときに、交通管理当局にリアルタイムでアラートを送信できます。そしてWazeなどの人気のナビゲーションアプリはそれに基づいて代替ルートを表示し、都市交通局は相乗りレーンを開閉し、渋滞を緩和させることができます。また、コロナによる通勤習慣の変化を受けて、渋滞パターンを調査し直し、それに基づいて、渋滞のピークを避けて建設プロジェクトや他のメンテナンス作業を計画することもできます。
IoTで効率的に交通管理を行うとき、必ず組み込むべきなのが、駐車場の空き状況と駐車スペースへのアクセスです。屋内屋外を問わず、駐車場にIoTセンサを設置すれば、リアルタイムで空き状況を確認し、事前に料金を支払い、効率的に施設を利用できるようになります。車のGPSシステムが駐車スペースへ誘導してくれます。一番近くの駐車スペースにスムーズに行ければ、いつまでも街中を走り回って空きを探す必要がなくなり、時間と燃料を節約できます。
都市交通局も、IoTを使えば賢く通行料金を徴収できます。車の走行場所と時間帯に応じて、きめ細かに課金できるようになり、 特定の時間帯になると、円滑に渋滞料を徴収できるようになるでしょう。例えばオレゴン州では、ガソリン税の不足分を補うため、走行距離連動型料金モデルを模索しています。車がどこを走行したかを車載センサが記録し、通行料金を計算します。これをもっときめ細かに実装すれば、時間帯を考慮して渋滞料も加算できるようになるでしょう。
互いに「会話」できるスマート交通信号は、渋滞と車の流れに関するデータを交換します。IoT技術でこれをさらに強化できます。交通信号の組み込みセンサは、リアルタイムの交通状況に関する情報を中継するだけでなく、周辺地域に渋滞やオフポリシーの行動がないか監視することも可能です。
信号灯の同期の判断、コマンドを変化させるタイミングと方法の判断は、交通工学的な車両走行パターン調査によって判断されますが、 IoTを使えば、こうした指示をより柔軟にリアルタイムで実施できます。つまり、ルールを画一的に適用せずに済むため、 ピーク時間外に、規定のスケジュール通りに赤信号で延々とアイドリングして待つ必要がなくなります。交通の流れを同期すれば、アイドリング時間と燃料を減らせます。
IoTに基づくデバイスのデータは、交通管理関連の政策の強い追い風になります。走行距離、時間、場所が記録され、皆がアクセスできるプラットフォームに表示されるので、一般市民への透明性も担保できます。すべての利害関係者が同じ考えを持ち、同じデータに基づいています。
今後の展開
スマート交通管理に関連する課題は、議論と政策の「スマート性」の技術的制約と結びついています。これは速やかに取り組んで解決する必要があるでしょう。
交通信号やその他のスマート交通管理機能をリアルタイムで運用するには、リアルタイム接続が必要になります。コンポーネントのIoT化が進めば、ネットワークインフラの需要も増加します。信頼性の高い広域ネットワーク(WAN)がスマート交通管理の目標達成の鍵となります。これに有効なのが5Gテクノロジーです。
生成したデータの所有者、それを既存のシステムに統合する方法によって、実施はさらに困難になります。お役所仕事に障害はつきものなので、スマートテクノロジー業者には官民のギャップを埋める経験が求められるでしょう。
自治体が先進的技術を既存の管理システムに統合するには、基盤整備を行う必要があります。プライバシーとセキュリティの法整備を行いつつ、取得するデータを検討することもその一部です。さらに行政とスマートテクノロジー企業は、中央ダッシュボードから洞察を得て、リアルタイムでアクションを実行できるようにするために、データ層を統合する必要があります。
これらの課題については、すでにオハイオ州コロンバスをはじめとする、世界各地のスマートシティ構想で実証実験が行われています。IoTは「モノ」に発信力を与えることで、交通管理など、都市のさまざまな機能をスマートにする力を秘めています。 その力を解放すれば、市民の生活の質が向上し、効率的に予算が使われ、カーボンフットプリントを減らすことができるでしょう。あらゆる面でウィンウィンの関係です。